2024年6月17日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月4日

「トランプ大統領のやり方を思い起こさせる」

 イグネイシャスの論説にも言及があるが、豪州はバイデン政権発足直後から接触を始め、12隻の通常型潜水艦を建造するフランスとの契約を廃棄して米国の助力を得て原子力潜水艦の建造に乗り換える方向で打診を始めたらしい。その後、秘密裏に交渉が行われて来た。

 この間、モリソン首相は今年6月にマクロン大統領と会談した際に、通常型潜水艦の能力など懸念を明確にしたというが、豪州はフランスに契約の破棄があり得ることまでは示唆しなかったのだろう。バイデン大統領もコーンウォールG7サミットの際を含めマクロン大統領と会談したが、この問題に言及することはなかったようだ。

 フランスが知らされたのは、9月15日、三ヶ国首脳による AUKUSの公表を前にプレスに報道が出始めて後になってサリバン補佐官から駐米フランス大使に通報があったのが最初だという。

 これでは、フランスが侮辱されたと怒るのは当然である。一義的には豪州の責任かも知れないが、ルドリアン外相は「この一方的、粗暴、予測不能の決定はトランプ大統領のやり方を思い起こさせる、自分は怒っている、同盟国の間で為されるべきことでない」と矛先をバイデン政権にも向けている。

 フランスに予め知らせれば、原子力潜水艦を取得する計画が妨害に遭うとしてしなかったらしいが、せめてフランスとの契約を破棄し、時間を置いてAUKUSを公表することが何故出来なかったのか。イグネイシャスは、AUKUSの戦略的価値はパリの短期的な怒りよりも重要度で勝ると述べているが、それ程生易しいものではないようにも思われる。フランスの怒りは容易に消えないであろう。

   
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