〝予兆〟を掴み
日本の民主主義を守れ
地方議会が意見書を採択することは法に基づいた権利ではある。だが、地方政治や行政法に詳しい関係者からは、「地方議会として最も重要な役割は外交に関する意見書を提出することではなく、地域に還元する政策立案をすることだ。こうした意見書の作成は立場を表明するためのアピールにすぎない」との声も聞こえてくる。
誤解を恐れず踏み込んで言えば、さらに多くの地方議会が同様の意見書を採択したところで、それらは地方議会の〝スタンドプレー〟にすぎず、中国側が現在の強硬姿勢を軟化させる可能性は極めて低いだろう。つまり、この問題は地方議会という「点」ではなく、国レベルでの「面」としての対応が求められているということだ。
外務省OBで元内閣官房副長官補の兼原信克氏は「中国は『相手の思想を支配する』という考えのもとで政策を展開している。日本が政治的な判断をするには、安全保障・経済・人権など、さまざまな要素のバランスを考慮するが、そこに自国としての強い意志や戦略がなければどんどん付けこまれる」と警鐘を鳴らす。
ミャンマーの政治的混乱に対する日本の姿勢がそうであったように、日本政府としての態度は、「懸念」を表明するにとどまるケースが多い。日本には人権に関連した他国への制裁措置を可能にするための法律がないため、そうせざるを得ないとの主張もある。だが、「懸念」とは本来、発覚した「事実」をもとに表明するものだろう。「法律」を制定せずとも、まずは誰もが発信する権利をもつ「言葉」を駆使して日本の態度を明らかにすべきではないか。
「冷静な態度で毅然と対応すること」と「態度を曖昧にして結果的に黙認すること」は全くの別物だ。岸田文雄首相が任命した人権問題担当の中谷元(げん)首相補佐官の役割も重要になる。岸田首相が就任時の会見で語った「言うべきことは言う」外交の実践が望まれる。今こそ〝日本の姿勢〟を示すときだ。
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