2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2013年1月9日

 下からの報告がある際にも、大部屋にいる全員に対して口頭で述べられる場面が多い。その方法では、情報を同時に共有する効果はあっても、報告を受けて判断をする必要がある人間にとっては、対話的なコミュニケーションが必要であるはずなのに、それが実現しない。実際、テレビ会議で重要な案件を協議している際に、情報共有ということで別の報告が大きな声で入ってくることがある。これでは、集中力が乱されるうえに、実際上お互いの発言が聞き取りにくくなる。情報共有の報告と判断のための会議については、別システム上を行える通信システムを整備すべきだろう。

 さらに、下の方から重要な件について「これこれこういう状況なのですが、判断お願いします」とテレビ会議につながっている全員に向かって提起される場面がある。もちろん、さまざまな判断が、それぞれのラインで行われている。しかし、平常時ではさまざまな部署の了解を取りながら進めているため、こうした異常時にも、意見がありそうな部署全体に対して、こうした案件を進めるに当たって意見ないですね? と聞いてみる癖がついているのだろう。しかし、これでは、最後誰が判断すればよいか分からないし、意見があっても黙ってみているだけということが多くなってしまう。

 明らかにリスクヘッジだけのための意見を述べられても困るが、有益な意見まで出てこない状況にしてしまうのは本末転倒だ。今後、事故時において、どういう人員がどういう形で集まって、どういう方法で情報を収集・報告し、誰が最終判断をしてその判断を作業指示としてどういうラインで伝えていくのかについての基本骨格を定め、それをもとにしてシミュレーションを積み重ねてトレーニングしていく必要があると、私は強く感じた。

 昨年12月に刊行された「検証 東電テレビ会議」(奥山俊宏/小此木潔/木村英昭/杉本崇、朝日新聞出版)は、同じ公開されたテレビ会議画像を基に、各種事故調の報告書や独自取材で得た情報を織り交ぜながら、福島第一原発事故直後の東電の対応を検証している。同書が指摘する問題点は、次の3つである。(情報開示についての問題点も強く批判しているが、本書が報道機関によって記されていることから、ここではあえて取り上げない。後述参照)

1)消防車やポンプの操作などの事故時に最重要となる作業が、自社社員で対応できず、協力会社頼みとなっていたこと

2)バッテリーなどの資機材、食飲料などの確保について、兵站が整備されていなかったこと

3)現場の実情がわからないまま、現場に負荷をかける本店や政府が手前勝手に仕事を進めたこと


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