日本では「クリティカルシンキング(批判的思考)」がよくできない
JUNKO ランゲージアーツは思考が深くなっていく技術なので、どうしても「手間のかかることを時間をかけてわざわざやる」ということがメインになりますが、時間をかけられる子ども時代にこそ必要なことだと思います。日本の学校教育では「人より早く正解を出すことや大量の暗記ができること」が「頭がいい」「できる」と評価されています。
でも、それは今ではAIがやってくれる時代ですから、日本の基礎学力の定義を根本的に見直す時期ではないでしょうか。世界の当たり前の教育を、今こそ日本でも当たり前にしたいものです。ただ、学校教育がガラッと変わるにはまだ時間がかかるでしょうから、親は気付いたその時から子どもにとって大事な学びを与えてあげる必要があると思います。日本では大学に入学するまでに求められることと、就職活動で求められることがあまりにも違いすぎます。就職活動をする時にやっと自分探しが始まるわけです。もしも小さな頃から言葉を使って自分自身の内面と向き合っていれば、その時苦労することも少なくなるはずです。
また、日本では「クリティカルシンキング(批判的思考)」がよくできないことも問題です。OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本の教育現場には授業の中に「クリティカルシンキング」が25%弱しか取り入れられていないことがわかっています。これは調査に参加した46カ国・地域の中でワーストです。日本では「批判」というと、ただ否定・非難しているようにとられますが、これは間違いです。
クリティカルシンキングというのは、大事な情報の取捨選択をして本質を見極め、様々な視点から考え、より良い結果を生み出すためのものなのです。私は独自にクリティカルシンキングを「問いを立てる力」として日本に浸透させたいと思っていますが、問いを立てる際に活用してほしいのが次の3つのキーワードです。
① なぜ?(好奇心・興味・関心・主体性はまずここから)
② 本当?(情報を疑う、自分で調べる、事実を知る、根拠を掴む、鵜呑みにしない)
③ あなたは?(多様性、個性、オリジナル、傾聴力、チームワーク)
このような「問いを立てる力」こそがランゲージアーツの本質でもあります。子どもは本来、好奇心旺盛で知りたいことにどんどん問いを立てるプロです。その能力を潰さず大事に育てていきたいものです。親の役割としては、まずは子どもの話をじっくり聞いてあげる時間を作ること、自分の考えを自由に話していいのだという環境を整えてあげることが最初の一歩でしょう。そして親子で問い合うことを楽しむ。そんな何でもないような日常の積み重ねが、子どもの思考力を育て大きな自信へと繋がります。
それから夫婦間の豊かな対話も子どもに良い影響を与えます。親同士がしっかりとしたコミュニケーションをとっていれば、子どももそれを見て学ぶことができます。現に私のスクールでやっているお母さん向けの講座では、「ランゲージアーツを家庭内に持ち込んだことで夫婦関係がよくなった。」「なぜ今まであんなにすれ違っていたのかよくわかった。」などの嬉しいフィードバックが後を絶ちません。
星野 私は、ランゲージアーツには3つのポイントがあると考えています。
①問いを自分で立てる
②問いに対する解決のプロセスを自分で考える
③自分の考えを分かりやすく相手に伝える
この3つのポイントは社会人に通じるものであり、学生も各教科に通じています。特殊なものではなく、汎用的な話にすると、
色々なことに通じます。受験テクニック的なことを言えば、ランゲージアーツは、小論文などに非常に役立ちます。
編集部 ありがとうございました。小学生から英語を学ぶといった動きもあるが、その前提となる「言葉の使い方」も学ぶ必要があることを強く実感させられました。