2023年1月29日(日)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2021年12月8日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)、『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

ビジネスモデルを学ぶ意義

 ビジネスモデルを学ぶ意義は、既に仕事をしている人にとっては自分の給与所得の背景が明らかになることである。鉄道会社のビジネスモデルの理解は、そのオペレーションを成立させる一つひとつの職務の理解と同義である。それを理解することで、運転士である自分がなぜ給与をもらえるのかが理解できるし、子どもにもそれを教えられるのである。

 職種や職能はビジネスモデルの中の一つのパーツである。全体が分かった上でパーツとしての機能・責務を果たすのと、ただのパーツであり続けるのとでは仕事に対するモチベーションが全く違う。前者はオペレーションの中で自分の職務の重要性と貢献を実感でき、同時に限界も理解できる。ここで言う限界には二つの意味合いがある。

 一つは自らのスキルの限界であり、それを克服・向上させることで給与や処遇の改善につなげることができる。もう一つは、その職務が自分に学びとして与えてくれる物の限界である。学ぶものがなくなった、しかしもっと成長したいと考える場合、別の職務へ経験の幅を広げる、または転職を行うという新たなチャレンジを誘発してくれるのである。

 また異なる業種のビジネスモデルを学ぶことで、そこで求められる職種・職能に対する対価の大きさ、つまり所得の水準に関して明確なイメージを持つことができる。これは、これから就職をしようとする人や、転職を考えている人にとっては大変大きな意義がある。前回のコラムで示したように、業種間には厳然たる所得格差がある(マイナビ『業種別 モデル年収平均ランキング』)

大人は子どもにアドバイスしているか?

 この格差は、業種間の稼ぐ力の差異によってもたらされている。このグラフからは直接読み取れないが、同じ業種の中でも企業間で稼ぐ力の差異もある。稼ぐ力を大きくするためには、売上を増やすかコストを下げるしかない。売上を増やす場合、単価を上げるか販売個数を増やすかである。競争がある中で、単価をあげる合理性はあるのか、また日本の人口が減っていく中で、販売個数を増やす余地があるのかが問われることになる。コストを減らす場合、原材料や人件費というオペレーションに必要な投入物を合理化しなくてはならない。特に人件費は即効性があるので、採用の抑制、給与水準の据置きという措置は頻繁に取られる。

 このようにビジネスモデルへの理解が深まることで、就こうとしている職業が果たして自分のマネープランを支えるに相応しいかどうかの判断ができるのである。このようなことを踏まえて、自分の子どもや周囲の若者に職業に関するアドバイスをしている大人はほとんどいないであろう。


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