50年という歴史やその時間の重みを、皆さんはどのように感じるだろうか。夫婦であれば金婚式であり、子供がいればその成長と併せて2人で過ごした時間の価値を噛みしめるであろう。また企業の創業50周年と言えば、創業者から始まり、順当にいけば2代目あるいは3代目までバトンタッチをしているはずである。
紆余曲折を経ながらも事業を維持・拡大できたのであれば、従業員共々感慨も大きいであろう。先の東京オリンピックから50年超が過ぎたが、当時に比べて日本の変貌ぶりはあまりにも大きく、この点においても50年という時間は斯様にも重く、深いものであると感じざるを得ない。
さて成長著しいASEAN経済であるが、実は今年が設立50周年の記念年なのである。ASEANとはAssociation of South East Asian Nationsの略称であり、その設立は1967年である。タイ、フィリピン、マラヤ連邦(現マレーシア)の3カ国が1961年に結成した東南アジア連合(Association of Southeast Asia)を前身とし、マラヤ連邦から1965年に独立したシンガポールとインドネシアの5カ国によって設立された。
東南アジアの経済成長促進を目的に掲げながらも、ベトナム戦争によって東南アジア諸国の共産化を恐れたアメリカの支援のもと、反共産5カ国による域内の政治的安定を主たる目的としていた。現在では10カ国がASEANに加盟し、総人口6億1000万人、域内の名目GDPの総計は1.8兆ドル、域内総貿易額は2.1兆ドルに上る巨大なマーケットを形成している。
2016年にはASEAN経済共同体も発足し、巨大市場におけるヒト・モノ・カネの更なる自由な流通と市場の発展が期待されていることを考えると、発足当時の様相からまさに隔世の感があり、ここでも50年の時間の重みを感じるのである。
日本経済にとって非常に重要な市場でありパートナーでもあるASEAN各国であるが、日本政府もこの50周年という記念年を節目に、日本・ASEAN間のより広範なビジネス機会を創出しようと諸々の企画を行っている。新年度早々の4月6日には、ASEAN10カ国の経済大臣を日本に招き、世耕弘成大臣のホストものと、日系企業との様々な交流・懇親が予定されている。
また翌7日には、ASEAN企業と日系企業のビジネスマッチングイベントが開催される。実は昨年、日本-ASEAN首脳会議にて、安倍晋三総理が日本-ASEANの強固な企業間ネットワークを形成することを推奨し、それが今回のマッチングイベントにつながった経緯がある。
イベントの主催者は経済産業省、JETROであるが、私はご縁あって、彼らに対してイベントのコンセプトや招致企業の候補について様々なアドバイスと、企業招致に関わる実務的サポートを提供させていただいた。結果、「ASEAN - JAPAN Innovation Meetup」との名の下、ASEANにおける次世代のビジネスリーダー候補や、ASEANと日本の注目スタートアップ企業が一堂に会する、新しいビジネスを生み出すためのマッチングイベントの開催実現にこぎつけることができた。
https://www.event-site.info/meetup2017/index.html
出展者の多くがASEAN企業で、従事している業種はヘルスケア、インフラ、ビジネスサービス、デジタル・IoTの4分野である。これらの業種はASEANにおいて社会課題解決型の新産業と呼ばれ、実際、成長著しい各国において新しいビジネスが生まれている。ASEANにおける新ビジネスの現状、新産業分野での日ASEAN間のビジネス連携にご関心ある方は、是非訪問していただければと思う。
AIを活用した不動産ビジネス
ところで、私は前回のコラムでAI にレンブラントの絵をディープラーニングさせて、新しいレンブラントの絵を描かせる、というトピックを紹介した。AIというと囲碁の世界での活躍が有名だ。実際、先日行われた「ワールド碁チャンピオンシップ」において、AIは日本、中国、韓国のトッププロ棋士相手に3位の成績を収め、改めてその能力の高さを実証した。
レンブラントプロジェクトにしても、囲碁のDeep Zen Goにしても、ロケットサイエンティスト的な開発者の存在がある。その意味でAIに対する興味は高まっても、まだ身近なものとして実感できていない人がほとんどなのではないだろうか。そんな中、私の元同僚がAIを活用した不動産投資の情報提供ビジネスを開始しようとしている。