出光興産が揺れている。
新聞や経済雑誌の記事にあるように、昭和シェル石油との世紀の経営統合に黄色信号が灯っているのだ。
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日本の人口の減少に伴い、石油の国内需要は長期的に大幅に減少すると見込まれている。石油業界のプレーヤーを総合エネルギー産業に転換させ、グローバルベースで競争力を持てるようにすること。そんな経産省の青写真を実現するには、石油業界の再編は不可避であり、正に出光と昭和シェルの経営統合は、この流れに合致するものであった。それに続くJXホールディングスと東燃ゼネラルの経営統合の発表と併せて、石油産業の再編は大きく進むはずだった。
計り知れないショックと失ったメンツ
そこに待ったをかけたのが出光創業家である。反対表明を行ったのが株主総会の席上であり、何とも前代未聞の展開となっている。出光経営陣としてみれば、創業家に十分な説明をして了解を得ていたと認識していたため、反対のショックは計り知れない。統合相手の昭和シェルに対してメンツも失った形である。創業家は反対表明をするにとどまらず、市場で昭和シェル石油の株式0.1%を取得するという行動に出た。
これにより既に33.24%の昭和シェル株式を保有する出光は、この統合を行うために昭和シェルの他の株主に対してTOBを行うことが求められることになった。これはもともと両社が合意していた方法ではないし、仮に実行する場合には巨額のTOB資金が必要になる。出光経営陣にしてみれば、創業家の呪縛によりいきなり身動きができなくなった格好だ。