3カ月ぶりにジャカルタに出張してきた。
インドネシア経済は、マクロ的には決して好調とは言えないが、それでも中間層と言われる消費を牽引する層は着実に育っており、2020年には国民の半数以上が中間層以上に属するようになると推定されている。インドネシアは人口2億5000万人の大国であり、中間層の勃興は非常に大きな市場の出現を意味する。実際、それを見込んで様々な小売・消費財系の企業の進出が続いている。しかしながら小売りを支える物流インフラはまだまだ脆弱。温度帯管理や3PLなど、先進国では当たり前の物流機能が未整備のままだ。今回の出張は、某物流系企業と現地企業の資本業務提携のキックオフのためのものである。
家人が心配したインドネシア出張
今回の出張が決まった時、さすがに家人は心配した。連日のようにテロの報道があり、そのほとんどが、一般人が多く集うソフトターゲットへの襲撃であるからだ。テロはもはやイデオロギーや宗教対立を超え、憎悪をベースに無差別殺人をすることだけが目的になっている。その対象は外国人・同胞を問わず、子供・女性も顧みない。また自爆が主たる手段になっているので、「危険でない場所」などもはや存在しないと言ってよい。
だが、ヒト・カネ・モノが動いてこそ経済は成長する。また日本のように自国の市場がこれから縮小していくような環境にあっては、どうにかして外の市場を確保せねばならない。だから企業戦士たちは今日もスーツケースを手に海外に飛び立っていく。インベストメントバンカーである私も、そのカタリストとして随行する。今日はそんな私がこれまでの出張経験を踏まえて、安全かつ快適な出張術についてお話ししてみたい。
かつてテロのターゲットは、特定の国や宗教(宗派)であった。だから安全対策として、特定国の大使館や特定宗教の施設に近寄らないというのが鉄則であった。特定国のエアラインの利用を控えたという人も多かったであろう。しかし標的がソフトターゲットになった今、安全管理のポイントは2点だ。ひとつは「人込みを避ける」ということ、もうひとつは「スムーズな移動を心がける」ということだ。前者は言わずもがなであるが、後者に関しては「一つの場所に長時間滞留しない」と言い換えたほうが分かりやすいかもしれない。