2024年11月25日(月)

BIG DEAL

2016年6月23日

 皆さんこんにちは。桂木麻也です。

 月刊誌への執筆からオンライン版に移行し、寄稿の回数に制限がなくなった。既に6月9日に『ハゲタカが中国の空を飛ぶ日』というコラムを書かせていただいたが、せっかく制限もなくなったことなので、月に最低2本は書いていこうと思う。1本は従来月刊誌で書いていたようなスタイルを踏襲した内容になるので、もう1本は、インベストメントバンカー的な視点で、ビジネスやライフスタイルの様々なアングルを語ってみたいと思う。

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 その第1回目は「英語」である。

 英語と聞いて頭を抱える日本人は多いはずだ。このコラムを読んでいる多くの人は、中学校の義務教育の過程で英語学習を開始し、高校・大学と10年を超えて勉強をしてきているはずである。社会人になっても英検やTOEICを受験したり、ベルリッツに代表されるような語学学校に通って自己研鑽に励む人は多い。しかしながら、10年を超える時間とコストをかけている割には、日本人の英語習熟度は低い。2013年とデータは最新ではないが、TOEICの国別平均点をまとめた資料がある。その中で、日本人受験生のランキングは、48ヵ国中40位と不名誉な位置にある。日本人の英語習熟の低さは、ここでも見事に証明されている。(出典:http://www.toeic.or.jp/press/2014/p016.html )

 一方、ビジネスのグローバル化は進み、中堅中小企業でも、海外市場に打って出ないと生き残れない時代になっている。楽天やユニクロなどは、いちはやく英語の社内公用語化に踏み切り話題を呼んだ。楽天の三木谷浩史社長は、英語公用語化のメリットを様々なメディアで語っているが、グローバルの人材プールから優秀な人材を採用する事ができるようになったことが最大のポイントだとしている。楽天のようなIT企業はエンジニアの質が最重要だ。

 日本のコンピュータサイエンスを専攻する学生は2万人。これに比してインド・中国における同分野の専攻学生はそれぞれ200万人・100万人だという。日本語という前提条件を外すだけで、優秀な人材へのアクセスは途端に広く・深くなる。三木谷社長の強調もごもっともである。(出典:http://toyokeizai.net/articles/-/33821?page=3 )

 また楽天は近年、Viber、Viki、Koboという海外の買収案件を次々クローズしているが、三木谷社長はこのようなクロスボーダーのM&Aをやる力がついたのも、英語公用語化のおかげであると語っている。これは非常に重要なポイントだ。ともすれば我々は、TOEICで何点をとったかという点数主義で英語力を評価しがちだが、楽天のような企業では、英語を用いてどのような結果を出したかというレベルで社員が評価され始めているのである。

 企業のグローバル化が進み、様々な言語の国の企業との提携が進展していく中において、英語が共通言語として果たす役割は大きい。企業の中でも、英語を用いて結果を出している人、英語は使えるが結果の出ない人、日本語の業務のみで結果を出している人、これらのいずれでもない人、というようにカテゴリー分けされ、自ずと昇格・昇給にも差がついてくるものと思われる。デジタル・デバイドという言葉があるが、ラングエッジ・デバイドも今後当然のように加速していくであろう。

 それでは英語が使えるとはどういう事なのであろうか。私の勤務する投資銀行業界は、それこそ楽天のクロスボーダーM&A案件のアドバイザリーを提供するのだが、非常に高いレベルの英語力が要求される。英語のスキルを、「読む・書く」と「聞く・話す」という2つのカテゴリーに分けてみよう。

 「読む・書く」における初級編を、eメールでクライアントとやり取りができるレベルとしよう。M&Aの現場では、趣意書、覚書、売買契約書や株主間協定書など様々な書類が取り交わされる。趣意書や覚書はA4で2−3枚の簡単なペーパーだが、インベストメントバンカーは、このような短いペーパーなら自ら本文をドラフトし、売買契約書のような長い契約書であればそのアウトラインを作成することが求められる。また外国人弁護士が仕上げてきた契約書を読み込んで、クライアントにより有利になるように最適な文言を見つけ出して弁護士の文章を添削することもある。


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