経営者へのプレッシャー
ビジネスモデルへのリテラシーが、社会全体として向上することは経営者にとっても大きな意味がある。まず稼ぐ力が低い業種には人が集まらなくなる。したがって、人材を継続的に確保して行くためには、稼ぐ力を増やすための一層の努力を行わなくてはならなくなるのだ。また社会全体でのリテラシーが向上することで、そのビジネスモデルが過度に化石燃料に依拠していないか、児童労働まで取り入れてコストを下げようとしていないか、などサステナビリティの観点からもモデルの正当性が問われるようになるのである。働き手が職種や職能の社会的な意義だけに着目して就職をしてきた時代とは、まるで異なる経営へのプレッシャーを受けることになるのだ。
岸田文雄首相が就任して早々に、医療従事者の給与水準を上げる施策を打ち上げた。医療従事者の勤務環境は、足元のコロナ禍もあって苛烈を極めている。にもかかわらず、前出のグラフにおいて最も低位グループに位置しているのを見るのはやるせないことであるし、社会全体の公平性の観点からも問題がある。
一方で、金融所得課税のような他の財源を使って所得補填を行うことは、割りを食らう側からの反発も出る。医療従事者の中にも、金融所得を得ている人はいるであろうし、当然、税率アップに大反対のはずだ。格差是正の政治的施策は必要だが、所得水準が低位である業種の稼ぐ力を、自律的に向上させる戦略・施策こそが国と民間が総力を上げて考えるべきことであるだろう。
深掘りすべきイシュー
さてここで深掘りするべきイシューが二つ出てきた。一つは業種間の、つまりビジネスモデル間の稼ぐ力の差異がどうして発生するのか、という問題。もう一つは、人生のマネープランと職業選択をどうマッチングさせるかという問題である。前者に関しては、AIの発展やデジタル革命が起きつつある現代において、今の競争力にサステナビリティがあるのかという点にも目を向ける必要がある。
後者に関しては、前回の記事で言及したように、職業選択による収入の予算制約で人生を規定してしまっていいのか、と言うことを掘り下げたい。それは、「人生にはお金がかかる」というパッシブな生き方ではなく、「このくらいのお金をかけて人生を楽しんでいこう」という発想に転換できないかという問いでもある。今回の紙幅では書き切れないので、次回に業種間の稼ぐ力から考察してみたい。
To Be Continuedである。