2024年11月22日(金)

BIG DEAL

2020年1月10日

(allensima/gettyimages)

 2019年10月に発足したインドネシア・ジョコ大統領の第二次組閣において、驚きの人事があった。オンライン配車サービスの新興企業Gojekのナディム・マカリムCEOが、教育文化大臣に任命されたのである。GojekはマレーシアのGrabとならぶオンライン配車サービスの大手で、二輪車・四輪車の配車のみならず、レストランからのデリバリーやコンサートチケットの代行取得など、資料1にあるような多種多様なサービスを提供しつつ急成長した。時価総額が1000億円を超えるユニコーンに成長し、ASEAN新興企業の成功例となった。かかる企業のトップが国のリーダーとして入閣するあたりが、今のインドネシアの目指すものを示唆していて興味深い。

ASEANにおいて新興のStart Up企業が躍進する背景

 足元のASEANの経済環境を見てみると、資料2のグラフ1に示すように、GDPの成長水準は今でも高い。足元でスローダウンの声も聴かれるが、日本やその他先進国のそれと比べるとまだまだ成長の水準は高いと言える。同じく資料2におけるグラフ2は、ASEAN主要国のGDPとそれらの主要都市のGDPと横置き比較したものである。主要都市のGDPはその国の平均をはるかに上回り、かなり所得水準が上がっているのが分かる。

 これと呼応するのが資料3のグラフ3である。これは各国の中間層と呼ばれる所得層の人口に占める割合を示しているが、多くの国で、7割近い人口が中間層と言われるセグメントにカテゴライズされているのが分かる。

 

 つまりグラフ1-3から読み取れるのは、各国では相応の水準の経済成長が続き、購買力を持った中間層が大都市に集まっているということである。ここに大きなビジネスチャンスがあることは言うまでもない。

 しかしながらASEAN各国においては、解決されていない社会課題が少なからず残っている。例えば脆弱な交通インフラである。鉄道網が整備されていないがゆえに、道路は常に渋滞しており深刻な社会コストとなっているが、その間隙を縫って現れたのが二輪車によるオンライン配車サービスである。

 また資料3内のグラフ4は銀行口座保有率を示しているが、インドネシア、ベトナム、フィリピンにおいては銀行口座を持つ人の割合がまだ低い。銀行口座がなければクレジットカードも持つことができないし、ローンも組めない。しなしながらそのような人でも、スマートフォンは持っているのが現在のASEANである。ASEANではスマホ上でのSNSが人気であるが、そこでの投稿の質や「いいね」を受ける数などから与信判断を行うサービスも出てきている。このように、豊かになりつつある人々のニーズやウォンツにこたえる新しいサービスや新興企業(以下Start Up)が次々と誕生しているのが、今のアセアンなのである。


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