2022年12月2日(金)

BIG DEAL

2020年1月10日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)、『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

Start Upを支える投資家としての財閥

 Start Upといえば、事業が軌道に乗るまでは、常に資金繰りに悩まされるものである。Gojek・Grabほどの規模になれば、戦略投資家による出資を受けることもできるが、アーリーステージにおいてはベンチャーキャピタル(以下VC)からの支援は必須と言える。日米・シンガポールの有力VCにとっても、数多くのStart Upが生まれるASEANは重要な市場であるが、近時、財閥傘下のVCがそのプレゼンスを際立たせている。

 

 インドネシアの例になるが、資料4、5はそれぞれ大手財閥シナルマスとリッポーが率いるVCである。

 また資料6はジャルムタバコを手掛けるハルトノファミリー傘下のVCである。リッポー傘下のVenturra CapitalはGrabに、またハルトノ傘下のgdpはGojeckに出資するなど、これらユニコーン企業がよちよち歩きのころから支援してきたのである。非常にリスクの高いVC投資であるが、ユニコーンに成長したGrabやGojekへの出資は、今後のIPOが上手くいけば莫大な利益を生み出すであろう。

 また投資のリターンもさることながら、Start Upの事業規模が大きくなった暁には、自らの既存事業とのシナジーを実現していくことも可能だ。またStart Upにしてみれば、資金の援助のみならず、財閥が有する顧客ベース、サプライチェーンを活用できる。正にWin-Winな関係と言えるのである。

 財閥そのものがStart Up事業を開始している例もある。資料7にあるように、シナルマスが伊藤忠と組んでFintechの領域でのP2Pレンディングの事業を開始したのが最たる例である。先述の通り、インドネシアにおいては銀行口座の保有比率が低いが、そのような人向けに融資をするのがP2Pレンディングである。Start Upに積極的に出資を行いつつ自らが新規事業を立ち上げるところに、今の日本企業にはないASEAN財閥のダイナミズムを感じる。

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