2022年11月29日(火)

BIG DEAL

2020年1月10日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)、『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

日系企業にとってのビジネスチャンス

 さて時代が平成から令和へと進むように、事業環境においてもデジタル化が進行している。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進行と言っても良い。テクノロジー(コンピューター化)による業務プロセスが強化されたのをDXのフェーズ1とすると、IoTによってビジネス、企業、人がテクノロジーで相互に接続された現在の状況がDXのフェーズ2と言われる。

 フェーズ1においては、業務にコンピューターを組込むことで、飛躍的に生産性を挙げることに成功した。またフェーズ2においては、これまで人の経験、知識、勘に頼ってきた部分が機械に置き換わってきたことで、スピード、距離、およびビジネスの量的・質的変化がもたらされたとされている。DXの進行はこのフェーズが上がることに外ならず、目下フェーズ2から、テクノロジーがあらゆる事象を取り込み、仮想世界(デジタル)と現実世界(アナログ)を結合するフェーズ3へと移行しつつあるのである。

 この流れを取り込んで事業化しようという企業の動きも盛んだ。「次世代事業部」という名前の部署が立ち上げ、中間層の成長著しいASEANでの新規事業を目論んでいる企業も多い。

 ただデジタルをキーワードに「何かしろ」という社名がおりているものの、何をどうやっていいのか分からないというのが現状のようだ。

 「ASEAN内のスマートシティ構想に参画し、モビリティを軸に事業構築をしろ」とか、「ブロックチェーンの技術を用いて、ASEANの旧態依然たるサプライチェーンを改革せよ」など、コンセプトはあるものの、どのように事業化して利益を出すかが見えず、私のところに相談に来る企業もある。

 私にも妙案がある訳ではないのだが、その際議論のベースとするのが資料9だ。資料の右側に示してあるのは、「次世代」と呼ばれるビジネスアングルで、実現の容易性で色分けしたものだ。Eコマースとそれに付随したEマネー/決済システムや、P2Pレンディングなど既に実現しているものから、「破壊的創造」を要する難易度の高いものまで羅列した。

 図のAの領域に位置するものは、アリババやテンセントのように、巨大な商圏を抑えたもののみが独占的に利益を享受できる領域だ。ここに新規参入して巻き返しを図るのはほぼ不可能であり、正しい戦略とは言えない。

 またCに列挙した領域は実現の難易度が高く、この領域に大きな投資をしていくのは勇気がいる。上記で例として挙げたスマートシティやサプライチェーン改革は、まさにこの領域に当たる。大きな先行投資は必要だが、事業の見通しを立てることは難しいが、見事に勝ち残ったものは巨大な商圏と共にAの領域に移っていくことができる。かつてのアリババ・テンセントのように。

 ここで繰り返すべき質問は、Cの領域でリスクを取れる日系企業の経営者がどれだけいるかということだ。現時点では多くはないだろう。だからここにリソースを投下することは、正しい戦略とは言えないのである。だがその中間を見てみると、Eコマースを支える配送システムや配送の高度化ノウハウの提供、または何らかのアセットの提供が事業として成立するBという領域がある。

 これらは既に実現している新しいビジネスに対するインフラであり、付随するファイナンスの提供である。Cの領域に位置する難易度の高い構想も、将来的には実現してAの領域に入っていけば、Bの領域はやはりインフラとして機能するはずである。こうすると日系企業が次世代と呼ばれるビジネスで儲ける領域が見えてくるのである。

 Cの領域に張りたい場合には、その領域で成功を目指して頑張るStart Upに対して直接投資をするのではなく、Start Upに出資をしているVCに対してLP出資をする方法もある。稟議制によるコーポレートとしての判断スタイルは変わらないし、変われない。そうであるならば、次世代ビジネスに対する挑み方を工夫する必要があるのである。

  
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