2023年1月30日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年12月13日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 なぜコメだけこれほどまでに需要量が落ち込むのかというと、第一にコメを良く食べる世代がいなくなることがある。年代別で最も多くコメを食べるのは戦後の食糧難時代を過ごした1939年生まれの人で、こうした世代は2030年にはいなくなる。第二は、朝食が「ご飯と魚」から「パンと牛乳」、さらにはグラノーラへと変遷したように、食の多様化が進み、ご飯の提供機会が減少する。第三は女性の社会進出や単身世帯の増加で、家庭で調理する時間が減少、食の簡便化が進み、炊飯という行為そのものが減少すると予測されているためである。

 実際、農水省はコメの需給見通しを作成する際、コメの需要量は毎年10万㌧減るという予測をして適正生産量を定めているが、近年、その減少ペースが速まっている。面白いことに農水省はコメ需要の減少要因に「価格上昇要因」もあるとしながら、生産量を減らして価格を上昇させるという政策を止めようとしない。

田植えをする農家がいなくなる!?

 農水省が次年度のコメ生産数量を示した食糧部会を開催していた同じころ、茨城県五霞町でドローンを使ったコメの直播(じかまき)栽培の勉強会が開催された。

 この勉強会は三重県のコメの集荷業者のたっての申し入れで開催されることになったのだが、この集荷業者がいるまちでは「来年田植えする生産者がいない」という事態になり、なんとかまちでコメ作りを続けるために省力化できるドローンで直播する方法を勉強しに来たという経緯がある。

 ドローンによる水稲種子直播栽培は始まったばかりで、技術的に解決しなければならない課題も多いが、生産現場では技術的問題を解決できてから取り組むという悠長なことを言っていられなくなっている。勉強会の場を提供した稲作農家も同じで、同社は現在80㌶でコメ作りを行っているが、この内20㌶はドローンによる直播を実践している。

 なぜ、直播栽培を導入したかと言うと、この地区でも離農する農家が増加、同社に栽培を依頼する農家が増えた。ただ、これまでのように田植え(移植)栽培では人手不足もあって作業をこなし切れないことがハッキリしたからである。

追い打ちをかけた「コロナ禍」

 日本の稲作農家戸数は、1995年は201万戸あったが、2025年には37万戸、30年には10万7000戸に減るという予測をしている調査研究機関もある。なぜこれほどまでにコメ作り農家が減って行くのかというと、農家の平均年齢は現時点ですでに68歳になっており、今後数年で大量離農することが避けられないからである。

 以前、大規模稲作農家や新規就農者、農協の組合長らが集まった席で「コメの消費減が先か、コメ作りを止める農家の急増で生産量が足りなくなるのが先か」が話題になり、大規模農家は現場の変化を肌身に感じていることもあってか「生産する農家がいなくなるのが先」と言っていた。現状を見るとそれが現実味を帯びている。

 それを加速させたのがコロナ禍とも言える。


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