連邦議会専門誌「Roll Call」の最新分析(12月9日)によると、「再選が最も危ぶまれる上院議員6人のうち4人が民主党に属し、その中には、昨年の特別選挙で初当選したラファエル・ウォーノック議員(ジョージア)のほか、マーク・ケリー議員(アリゾナ)らが含まれている。
もし、共和党が上下両院を制することになった場合、バイデン大統領が就任当初から大々的に打ち上げてきたアメリカ再生のための「ビルド・バック・ベター(より良き再建)=Build Back Better(BBB)」計画はほとんど実現の見通しが立たなくなり、同政権のレイムダック化はいよいよ深刻になる。大統領個人としても、支持率低迷が続き、24年大統領選への出馬断念にもつながりかねない。
②下院は共和党が圧勝、上院は民主が辛勝
共和党は20年国勢調査結果が今春、公表されたのを踏まえ、下院選の各州選挙区の区割りをより有利になるように書き換える「ゲリマンダリング」作戦を民主党以上に露骨に展開してきた。
その結果、ニューヨークタイムズ紙によると、これまで、両党候補が接戦となると見られていた5つの選挙区が去る11月時点ですでに、「共和党圧倒優位」に塗り替えられた。とくに多くの選挙区を擁するアイオワ、ノースカロライナ、テキサスなどの諸州における共和党寄りの区割り書き換えが目立っている。
区割りの書き換えはこれまでのところ、全米50州合わせ262選挙区に及んでいるが、このうち共和党寄りに書き換えられた選挙区は187議席にも達しているという。
一方、上院選では、100議席中34議席が改選されるが、民主党の改選議席は14議席に対し、共和党は20議席あり、数字だけ見た場合、共和党のハンディはより大きい。
この状態で、11月投票日に向けて、オミクロン感染拡大がある程度抑制され、春先から、1兆ドル以上の規模の児童・社会福祉、気候変動対策などの大型財政計画が軌道に乗り始めた場合、国民のムードとバイデン支持率の回復により、民主党が現状の50議席からさらに数議席上乗せとなる可能性も皆無ではない。
この点について、南部テネシー州のヘンドレル・レムス民主党支部長は「もし来年早期に景気拡大のためのBBB法案と、わが党が選挙を有利に進めるための『投票権改革』法案の二つを成立させることができれば、最低でも上院の多数支配は確保できるだろう」と予想している。
年頭から選挙モードの可能性
③上下両院ともに民主党が多数維持
下院で民主党が過半数を維持する可能性は最も低いが、ありうるとすれば、トランプ自身の今後の行動により、現職共和党議員の立候補が妨害され、民主党候補が有利になるという奇妙なシナリオだ。
トランプ氏はこれまでに、下院でのトランプ大統領弾劾審議で賛成票を投じたリズ・チェイニー、ジェイミー・ブートラー、ピーター・メイジャー各議員ら7人について、彼らの再選を阻むため、代わって自らの息のかかった候補者擁立を表明している。しかし、このまま予備選段階で同一選挙区内での共和党の内紛状態が続いた場合、それが本選に悪影響を及ぼし、結果的に民主党候補を優位に立たせることにもなりかねない。
一方、上院ではこれまでに、現職議員6人が引退を表明しているが、そのうち共和党はリチャード・バー(ノースカロライナ)、ロブ・ポートマン(オハイオ)、リチャード・シェルビー(アラバマ)、ロイ・ブラント(ミズーリ)、 パット・トゥーミー(ペンシルバニア)のいずれもベテラン議員5人が占める。民主党はパトリック・レイヒー(バーモント)の1人に過ぎない。
これら共和党の5人に代わる新人候補はいずれも政治手腕は未知数だけに、民主党がこれらの州で善戦すれば、現勢力から数議席上積みのチャンスも出てくる。
また、仮に民主党が上院で50議席を上回った場合、これまでのようにキャスティング・ボートを握ったマンチン議員一人にホワイトハウスが振り回される事態は多少とも改善されることになり、今後の政権運営と24年大統領選への展望も開けてくるシナリオもあり得よう。
22年のアメリカの政局は例年になく、年頭から中間選挙モード一色となることだけは間違いない。