欧州のロシアガスへの依存度は高い。20年の欧州連合(EU)のロシア産ガスへの依存度は53%にも上る。仮にノルドストリーム2を開通しないという制裁措置を取ったなら、ロシアは即座に欧州向けのヤマルとノルドストリーム1のガス供給を止めるという措置に出ることができる。
そうすれば、厳冬期にガス・電力供給が著しく不安定になる。ショルツ首相に、事実上そのような選択肢はない。ノルドストリーム2を経済制裁に使うというのは、著しく非現実的な案である。
八方ふさがりのバイデン政権
ヨーロッパがこれほどまでにロシアのガスに依存している最大の原因は、メルケル前政権がとって来たエネルギー政策にあるが、これを短期間に変える方法は存在しない。したがって、バイデン政権がロシアに対する経済制裁として使える手段はほとんど存在しない。国際決済システムSWIFTからロシアを外す可能性も検討されているようであるが、これもイランのような国とは異なり、ロシアと貿易取引があるヨーロッパの国は多数あり、それほど簡単にできるとは思えない。
要するに、バイデン政権としては八方手詰まりである。そもそも、ウクライナ問題で、最初に軍事オプションを外して経済制裁しかしないと言った時点で、ボタンの掛け違いが始まったと言えるが、ここまでくれば、何とかプーチンが納得するような玉虫色の外交パッケージをまとめ上げるくらいしか手はない。
最も重視しているのは、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟だろうから、そこは原則譲っていないように読めるが、多くの条件を付けて事実上譲るような文面をまとめ上げるしかない。外交の腕の見せ所であるが、これは米国人が得意とする分野ではない。