新年早々、米露間でウクライナ問題に関する交渉が始まっているが、その背景をなしているのが、秋口から始まっているガス問題である。
欧州各国でガス価格は高騰しており、それにはいくつかの要因が重なっていると言われている。コロナからの復旧による急激な需要回復、脱石炭火力を急いだために電力の供給不足が起こった、ロシアでの厳寒のためにガス需要が急増した、などである。
他方で、ロシアが意図的に供給を絞っているのではないかという疑惑は、当初から持たれていた。ロシアは昨年12月、同国西部からベラルーシ、ポーランドを経由してドイツに至る天然ガスパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」へのガス供給を停止した。
ドイチュ・ヴェレ(ドイツ国営の放送事業体)の2021年12月28日付け解説記事は、天然ガスの「武器化」と形容し、今後さらなる困難が続く可能性が高いと指摘している。この記事が言うように意図的かどうかは別として、ロシアからのヨーロッパ向けガス供給が減っていることは確かである。
少なくともこの状況がプーチンに有利に働いていることは間違いない。バイデン政権が、万が一ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合の制裁の一つとして、ノルドストリーム2を開通しないことを挙げているからだ。
そもそも独露間のパイプラインであるノルドストリーム2に関して、米国に直接の権限はない。発足したばかりのショルツ新政権への根回しもほとんどせずに、ノルドストリーム2を制裁に使うということを発言してしまうのは、準備不足である。