初の黒人女性最高裁判事指名の意味
連邦判事指名において「アファーマティブ・アクション」は適用されない。トランプ前大統領は4年間で229名の連邦判事を指名した。その内訳は白人男性が148名、白人女性が44名で合計192名であり、白人が全体の83.8%を占めた。一方、少数派男性は28名、少数派女性は11名で合計37名であった。
20年米国勢調査によれば、57.8%が白人、18.7%がヒスパニック系(中南米系)、12.1%が黒人で、5.9%がアジア系であった。ということは、トランプ氏が指名した白人の連邦判事の割合は、白人人口よりも26ポイントも高いことになる。裁判所における白人支配の印象は拭えない。
これに対し、バイデン大統領は人種において多様性に富んだ「米国らしい裁判所」を目指している。
バイデン大統領の最高裁判事指名によって、保守派とリベラル派の構成は「6対3」から変わることはない。だが、バイデン氏にとって初の黒人女性最高裁判事指名は極めて重要な意味を持つ。
第1に、支持基盤固めになるからである。支持基盤である「黒人」と「大卒の白人女性」の双方から支持を得ることは間違いない。
第2に、民主党内の結束を図る機会にもなるからである。昨年、目玉政策である大型歳出法案を巡り、身内の対立が先鋭化し成立しなかった。
第3に、共和党上院議員の支持を得て、超党派で黒人女性最高裁判事が誕生すれば、無党派層に対するアピールになるからである。無党派層の支持を回復するきっかけになるかもしれない。
バイデンに追い風
最新の世論調査結果をみると、最高裁判事指名に関してバイデン氏に追い風が吹いている。エコノミストと調査会社ユーゴブの共同世論調査(22年1月29日~2月1日実施)によると、最高裁における人種の多様性に関して、有権者の66%が「重要である」と回答した。20年米大統領選挙でバイデン氏に投票をした有権者の92%、無党派層の61%が重要であると捉えている。
さらに同調査では、黒人女性最高裁判事指名について53%が賛成、25%が反対と答えた。昨年8月から支持率低迷が続いているバイデン氏にとって、黒人最高裁判事誕生がゲーム・チェンジャー(不利な状況を変える出来事)になり得るのか注目だ。