2024年4月24日(水)

2024年米大統領選挙への道

2022年2月15日

トランプは人種差別の被害者? 「波及するメッセージ」

 バイデン大統領の黒人女性判事指名を意識したトランプ前大統領と共和党議員が、黒人を巡る発言を繰り返している。トランプ氏は1月29日、南部テキサス州で支持者を集めた大規模集会を開き、ニューヨーク州、ジョージア州およびワシントンDCの3人の検事を「急進的な悪意のある人種差別者」とレッテルを貼って厳しく非難した。

 彼らはトランプ一族が経営するトランプ・オーガニゼーションの脱税疑惑、20年米大統領選挙においてトランプ氏が南部ジョージア州務長官に圧力をかけた問題と、21年1月6日に発生した連邦議会議事堂乱入事件を調査している。ポイントは、3人の検事全員が黒人であることだ。

 米ワシントン・ポスト紙のクリーブ・ウットソン・ジュニア記者は、トランプ前大統領はテキサス州の集会で支持者に対して「自分は人種差別の犠牲者である」というメッセージを発信したと指摘した。確かにその通りだ。

 白人中心の支持者は、トランプ氏のメッセージを「白人男性は人種差別の犠牲者である」と解釈するだろう。彼らは「白人男性は不公平に扱われ差別されている」というメッセージを支持者間に波及していくのだ。

「人種差別を行うのは黒人」という「隠されたメッセージ」

 白人男性は生まれながらにして特権を得ている。だがその特権は今、失われつつある。しかも彼らは差別まで受けている。

 このようなストーリー(物語)を構築したトランプ前大統領の狙いは、支持基盤の中核を成す白人男性の怒りや危機感を煽り、24年米大統領選挙まで彼らを活気づかせることである。一言で言えば、白人男性の「士気の維持」といえよう。

 トランプ氏のメッセージには「隠されたメッセージ」が存在する。

 人種差別を行うのは実は白人ではなく、黒人であるというメッセージが隠されているのだ。白人が黒人を差別するのは大嘘で、「逆差別」が真実であると言いたいのだ。

 トランプ前大統領のメッセージに基づけば、バイデン大統領の黒人女性最高裁判事指名は、白人男性に対する差別になる。トランプ氏のメッセージは、正に「波及する隠されたメッセージ」といえる。


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