NHKの経済ドラマなら、真山仁原作の「ハゲタカ」(2007年)である。銀行員として、中小企業を倒産に追い込んだ過去を持つ、ファンドマネジャーが日本企業に買収、再編を仕掛ける。その対象は大手電機であり、玩具メーカー、老舗の旅館など多岐にわたる。
ジャーナリスト出身の真山氏の精緻な取材がベースにある、原作を巧みに生かしている。フィクションとジャーナリズムが融合されている。
主役のファンドマネジャーを演じた大森南朋は、この作品が海外の賞を獲得したこともあって、一躍日本を代表する俳優の仲間入りを果たした。
ラストシーンで、大森が倒産させた中小企業をひそかに訪れて、路傍に落ちたネジを拾う。彼がファンドマネジャーを辞めることが暗示される。
リーマンショック後に、激烈なマネーの世界から抜け出す人々をみた。ドラマの予言性である。
「メイドインジャパン」もまた、現実の企業の経営危機について取材した経緯が、チーフ・プロデューサーの高橋練によって、明らかにされている。
多方面に取材をした結果として、ドラマのなかにさまざまな企業が透けてみえるようである。パナソニック、シャープ、トヨタ……。
日本のモノづくりが負けた本当の理由とは
「メイドインジャパン」は、創業者一族の経営判断の誤りが、経営危機を招いた大きな要因であるというシナリオである。テレビや半導体事業の継続のために、8年前にリチウムイオン電池の開発を、タツミ電機はいったん中止した。その技術が中国企業に結果として移転し、競争に敗れる。
「ハゲタカ」が企業買収や再編に関する、金融の新しい潮流をていねいに説明しながら、そのターゲットになった企業の業界の環境についても描いた。
「メイドインジャパン」は、日本の製造業が直面している危機の要因について、経済ドラマの隠し味であるジャーナリズムの要素が弱いように映る。
産業界で働く人々は、自らの身に降りかかっている運命が、なにによってもたらされたのかいま、ようやくわかってきている。