2022年10月1日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年2月25日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 日本における人材確保、人材育成という観点からすると、この「失われた2年」の代償は、中長期的に日本の経済社会にボディブローのように効いてくるに違いない。けれども、今はそんなことを言っている場合ではない。

 3月の声を聞こうという現在、新年度へ向けて何としても「待機留学生15万人」の入国を4月の新年度に間に合わせなくてはならない。ここで年度を超えてしまっては、信用問題ということで各大学は更に一段の苦境に立たされるし、それは交換留学制度が死守できるかにも影響する。

 オミクロン株の感染拡大を遅らせて「対策の時間を稼ぐ」という意味で、昨年12月から今年1月初旬に国境閉鎖がされたことには「最低限の合理性」を否定することはできないかもしれない。だが、その後市中感染が顕著となった後も「対策が継続」されたことには合理性はない。世論の一部にある感情論に対して政権が受け身になっていただけだ。この「待機留学生15万人」の入国を早期に完了できるかどうか、これは中長期の国力維持にとって大きな分岐点となる問題といっても過言ではないだろう。

感染対策の文化摩擦に配慮を

 では、仮に「1日当たりの入国者上限」を5000人から更に拡大して、この15万人を3月中に入国させられれば万事上手くいくのかというと、そう単純ではない。まず、疾病への不安から感情論に流れがちな世論が留学生を敵視しないように、少なくともネットを含むメディアが根拠のない排外感情に「迎合」しないよう、厳しい監視が必要だ。

 同時に、大学の側も新たに入国してきた留学生に対して、慣れない日本式の感染対策に協力してもらえるように、親身になって丁寧な説明を行うことが重要だ。彼らの不安も解消するように、平時以上のケアを行う必要があるだろう。

 地域社会に対しては、誠実で透明性のある対応は急務となろう。その上で、留学生対策や、感染対策で優れたノウハウのある大学は、他の大学にノウハウを提供してお互いに助け合うことも必要と思われる。

 コロナ禍は世界中の国境を分断した。コロナ禍への感染対策が各国の文化を反映する中で、世界各国では感染対策も、世論の意識も微妙に異なる。そんな中で、文化摩擦を最低限に抑え、最終的には困難を乗り越えて個々の留学生に、やはり日本に来てよかったと思ってもらえるようなレベルにまで、対応の精度を上げていかねばならない。

 コロナ「鎖国」による「失われた2年間」をどう取り戻してゆくのか、この春、問われているのは日本社会の復元力である。

  
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