2022年10月8日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年2月1日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 30年以上に及ぶ日本経済の低迷の真因は、日本の競争力が低下したことにある。衰退の兆候は1980年代に遡り、経営判断の遅さ、国際化の遅れ、コンピューターソフト技術の決定的な遅れ、リスク選好マネーの不足などはバブル崩壊前から起きていた。バブル崩壊はその結果であり、崩壊が衰退の起点ではない。

 そう考えると、日本の産業構造改革は待ったなしである。だが、改革イコール何もかも欧米流でいいのかというと、そうではない。

(Razvan/gettyimages)

 理由は簡単だ。日本には人材以外に主な資源はない。その人材を生かした国造りをするには、日本という文明の特質を活用するしかない。準英語圏で教育水準が高い国ということでは、日本より労働力のコスパの高い国はいくらでもある。そうしたライバルに打ち勝ちながら、先進国型の高付加価値経済を実現するには、日本独自の文明の力を使っていくしかないからだ。

注目すべき日本文明も3つの特質

 日本という文明はユニークなものであり、従ってその行動様式や発想法は長所にも短所にもなりうる。この30年間は、その短所ばかりが目立ってきているが、その長所を使って勝負してゆかねば、国が生き残る道はない。欧米流を盲信して追随しているだけでは、敗北は必須である。

 では、日本という文明の特質のどこに注目してゆけばいいのだろうか?

 1つ目は「ビジュアル化」というキーワードである。日本の文明は可視化できるものに非常な強みを持っている。二次元の戯画が浮世絵となり、やがて漫画、劇画、アニメ、ゲームといったカルチャーに発展したのはその好例だ。

 服飾デザインや、工業デザインでも20世紀には最先端を走っていた。概念をチャート化するスキルはビジネスの現場で活用されたし、東京五輪を契機としたピクトグラムが日本の考案だという事実も、もっと誇っていいだろう。

 目に見えるものを重視するということでは、施設や街路を清潔に保つという習慣も日本の強みだ。清掃の行き届いた街、オフィス、交通機関などを日本人は、ほとんど自身のアイデンティティのように大切にしている。このように、目に見える可視化されたものに強みを持っている文明は大切にしたい。

苦手な抽象概念でもビジュアル化で戦える

 反面、日本人は目に見えない抽象概念は苦手だという意見がある。実際に金融工学や、プログラミングといった領域で、ここ40年ぐらいの日本は低迷していると言っていいだろう。強みの裏には弱みがあるのは自明であって、大いに反省が必要だし、すればいいのである。

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