冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2021年10月1日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 2020年にインバウンド(訪日観光客)4000万人という数字を、当時の安倍晋三政権は目標として掲げていた。実際にその前年の19年には約3200万人という数字を叩き出していた中では、この4000万人という規模の実現は時間の問題であると思われていた。そこへコロナ禍という「荒天」が襲うなどということは、誰も想像していなかったのである。

 それからわずか2年後の現在、1年半を遥かに超える「荒天」を受けて業界は未曾有の危機に直面している。中でもインバウンドは〝減少〟どころか〝壊滅〟という現在、改めて4000万人という数字を語るというのは、非現実的と思われるかもしれない。だが、私は仮にコロナ禍が何らかの収束を見るのであれば、日本の観光産業の実力としてはインバウンド4000万人どころか6000万人も視野に入れて考えなくてはならないと考えている。

(YiuCheung/gettyimages)

 これは、決して荒唐無稽な楽観論ではない。なぜならば、この1年半にわたって世界で続いた事実上の「国境閉鎖」期間に、日本にとってのインバウンド観光の潜在需要は、目に見えない〝膨張〟を続けているからだ。現時点でのインバウンド観光というのは事実上ゼロであるが、この後、一旦国境が開かれた場合に、爆発的とも言っていいような勢いで戻ってくるのは間違いない。

 つまりビザ免除プログラムが再開し、その他の国に対しても観光ビザの発給が始まり、その上で入国後の自主隔離が免除となって国際便が20年初頭のダイヤに戻った瞬間に、少なくとも19年並みの「年間3200万人ペース」、場合によってはそれを上まわるペースでの観光客が来日する可能性がある。その先には4000万人、6000万人という数字は当然に視野に入ってくる。

2010年代とは違った日本の魅力

 アメリカに暮らし、アメリカ人とともにコロナ禍を経験し、彼らの「ポスト・コロナ」への渇望にも似た思いを感じてきた私としては、このコロナ禍の1年半に起きたことを振り返りつつ、アメリカ人がいかに「日本に行きたがっているか」について、5点ほど考察してみたい。そして、この考察はアメリカ人だけでなく、欧州やアジアの潜在顧客層にも共通していると考えられる。

 1点目は「リピート需要」である。ニュージャージー州に住む私の周囲でも、「京都、奈良だけでなく、もっと閑静な寺院や神社に行きたい」「箱根が良かったので、次は別の温泉に行きたい」「もっと外国人の少ない場所で本当の日本を知りたい」などという声をよく聞く。

 とにかく既に膨大な人口が日本への海外旅行を経験しており、その好印象を口コミで広めつつ、自身が再訪を夢見ているのは事実だ。例えば、コロナ「明け」を目指して営業を再開している航空会社や旅行代理店のウェブサイトのイメージでは、「海外のディスティネーション」として必ず日本が取り上げられている。

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