Wedge REPORT

2021年5月21日

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事業再構築補助金の運用で中小企業庁の手腕が問われる (WEDGE)

 店舗型の飲食店がECサイト用の商品を開発し販売、自動車部品製造業者が耕作機械部品を製造、葬儀でのメッセージカードを子や孫への生前メッセージ作成へ──。

 新型コロナウイルス感染症拡大による逆境をバネに事業の変革を進める中小企業が増えている。

 そんな中、中小企業庁が新型コロナの影響で売上が10%以上減少している中小企業と中堅企業を対象に、新分野展開や業態転換への取り組みを支援する「事業再構築補助金(以下、補助金)」を創設し、2021年4月に第一次申請を受け付けた。テイクアウト販売を始める飲食店や自動車部品から医療機器部品の製造に切り替えるといった事業計画を支援するもので、1社あたり最大1億円を支給し、日本の全中小企業の約2%にあたる6万7000社への支援を想定する。

 注目されるのは、その補助金額の大きさだけでなく、全体の予算規模だ。2020年度第三次補正予算で1兆1485億円を計上している。申請受け付けは21年度中に行うとしており、数年間にまたがるものではないという。起業論やその支援政策に詳しい日本大学商学部の鈴木正明教授は「アイデアはあっても資金不足で経営革新が進まない企業が1兆円を超える規模で存在するか見極めることが欠かせない。審査・採択がうまくいかなければ失敗に終わる可能性もある」と指摘する。補正予算では、この補助金を含めた複数の事業を「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」という名目にして11兆6766億円を計上しており、コロナ禍に乗じた予算措置がなされた懸念もある。

 実際に中小企業の動きは活発だ。「1日に10件以上の問い合わせ電話がきている。これまでにない動き」。中小企業への公的支援をサポートするシェアビジョン(東京都千代田区)の小林卓矢社長は話す。補助金の概算要求が出た昨秋から金融機関などによる情報提供を受けた中小企業が活発に動いていたという。しかし、「多くの企業は『これをやりたい』など考えを持っているが、『ただ補助金が欲しい』という企業もある」と小林社長は話す。

 中小企業庁は補助金の申請要件として、これまで実施したことがない事業であることや、設備の変更、3~5年で生産性などを上げる計画とすることを課している。同庁経営支援部担当者は「経済産業省が認定する税理士や中小企業診断士らの支援を必須とし、3000万円を超える場合は金融機関のアドバイスも求めている。客観的な視点で各企業が持つスキルや財務状況を見た上で中期目標を作成してもらう」と強調する。事業資金の一部を金融機関からの融資や自己資金で賄う必要もあり、〝補助金ありき〟の申請を防ごうとしている。

 ただ、予算の巨額さから「要件を突破し、実現性と将来性を備え、地域経済活性化の一助となるストーリーが描ければ通りやすくなるのではないか」(中小企業支援コンサルタント会社「東京経営サポーター」の内木盛人社長)との声もある。第一次申請の審査・採択結果は6月に発表され、その後も年度内に4回程度申請受け付けを行う予定であり、第一次採択結果への注目が集まっている。

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