新型コロナウイルスによる不況対策として、政府は、雇用調整助成金(以下、雇調金)の拡充を進めている。この制度は、事業活動が縮小しても雇用を維持する企業に1人1日8330円を上限に支給する制度である。助成率は中小で3分の2、大企業で2分の1である。新型コロナ対策の特例として、2020年4月からは助成率最大100%、上限額も1万5000円へと増やしている。また、第3次補正予算で、20年12月までとしていた制度の特例を21年にも継続することにし、これまで対象外だった他社へ出向させた場合も対象に含めることを検討している。
雇調金の支給は、11月27日現在の累計で192万8491件、支給額は2兆2965億6300万円だが、どれほど雇用維持に役立っているかはよく分からない。分かっているのは件数と金額で、件数というのは事業所が助成金を申請して認められた件数であり、何人の労働者が何か月間雇用を維持できたのかは集計されていない。
一方、労働力調査で四半期ごとに公表される詳細集計には休業者という分類がある。そのうちの「勤め先や事業の都合」による休業者を見ると、コロナ以前には20万人程度だったものが、20年4~6月期に159万人に増加した。ここには雇調金で失業を免れた人々が多く含まれているだろう。139(159マイナス20)万人が失業するところを抑制できていたとみられる。
これを示したのが上図である。休業者は四半期ごとの数字しかないので、月ごとの数字は毎月同じように増減すると考えて補間している。4月~8月の「勤め先や事業の都合」による休業者を累計すると520万人。この間の雇用調整助成金の支給決定額は1兆2360億円である。それだけの額を支払って失業者数の上昇を抑えていたことになるだろう。9月以降の休業者の数字は分からないが、雇調金の支給額が高止まりしていることから考えて、おそらく増加しているだろう。
雇調金は失業を減らしているのだから良いことに違いない。新型コロナが終われば人々はまた元の職場に戻れるのだから、これを続けていれば良いという考えもある。ワクチンも開発されつつあり、経済は元に戻る可能性も出ている。実際、「勤め先や事業の都合」による休業者は、20年4~6月期の159万人から7~9月期には43万人に低下した。人々はある程度は、元の職場に戻れたのである。しかし、最近の患者数の増加を見ると、再び休業者が増えることになるかもしれない。