「自由世界が中国共産党を変えなければ、我々が彼らに変えられてしまう」。2020年7月23日、米国のポンペオ国務長官、レイ連邦捜査局(FBI)長官ら4人は中国共産党の体制を変えさせる趣旨の演説を行った。米国は、米ソ冷戦では共産主義の拡張の勢いを削ぐために、ソ連国内での共産勢力の弱体化や、衛星国の共産化を防ぐ介入を行った。だが、ソ連の共産体制の変更までは目標にせず、共産体制VS.自由民主主義による繁栄手段の正当性を問う競争を選んだ。
だが、今回は違う。米国は中国の共産党体制の変更を目標に据えたことで、45年続いた米ソよりも冷戦が長期化する恐れが高まったのである。
無論、中国も黙っていない。中国は10月17日、攻撃的な輸出管理法を制定し(右表)、20年12月から施行した。日本企業の輸出管理サポートを行う安全保障貿易情報センター(CISTEC)は10月19日、重大な懸念として「中国の現地拠点、工場、研究機関等に出向あるいは現地採用されている日本人が日常的な技術情報のやり取りやデータへのアクセスが許可対象となる恐れがある」と表明。これは、中国が米国同様の制度を打ち出し、米中デカップリング(分断)が不可欠な状態を自ら確定させたことを意味する。
確かに米国は多様な新ルールを議論している。例えば、中国企業が22年1月までに米国監査基準を満たさない場合に上場を廃止させる。あるいは中国軍へ製品を供給、または人権侵害を理由に米政府が制裁を科している中国企業について、連邦職員や軍人の退職年金基金の投資を中止させる、などである。
前者については、中国企業が株主より共産党の意向を優先し軍事に肩入れさせない意図が背景にある。国有企業は共産党の指導によって利益の一部を軍事施設の開発などに充てられる。財務を非開示にすれば、軍事関与を隠したまま市場から資金を調達できる。株主を欺く行為であり、資本効率の最大化に反する。後者は、米国企業による利益最優先の姿勢を改め、倫理的な行動に是正させるものだ。
これらの共通点は、自由を逆手に取り目に余る行動をとる中国と、利益至上主義によって中国に取り込まれた米国企業に、「自由であっても守るべきルールの具体化」を通じて自由主義を成す価値観を可視化させることだ。トランプ政権誕生後、中国は米国に代わる自由の守護神を標榜し始めた。中国共産党が叫ぶのは共産党にとっての自由の確立でしかない点を明らかにし、共産党の異質性を際立たせようとする戦略的な意図が感じられる。