しかしMSCマークの取得は容易ではありません。乱獲で魚が減らないよう、第三者機関の専門家が、細かく調べ上げていきます。ロシアはスケトウダラで2008年に申請し、当初は2010年末にも認証を受けるとみられていましたが、毎年のようにスケジュールが延期されており、2013年2月現在、最終段階に来ているといわれているものの、まだ認証を受けていません。
認証については、第三者機関による異議申し立てが可能なため、それを審議する必要性が生じ、認証が遅れることがあります。また、認証後も毎年、年一度の監査を受けなければなりません。
ロシアからのカニ駆け込み輸入
日本向けが急激に増加
ロシアの認証取得のネックになっているのが、密漁と乱獲です。このためロシア政府は密漁密輸防止協定を日本や韓国、中国など関係国と結び始め、官民そろって対策に乗り出しています。
2012年9月、ロシアでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、野田佳彦首相(当時)とロシアのプーチン大統領の首脳会談で「カニの密漁・密輸防止のための2国間協定」に合意しました。背景にあるのは、ロシアの乱獲対策です。
輸入国であるロシアからのカニ輸入通関統計が、ロシアのカニ輸出通関統計より、非常に多くなっているからです。ロシア産のカニは、日本国内に出回るカニの総量の6割前後を占めています。協定によって「国内に出回るカニの量は減り、価格に影響が出る可能性は否定できないだろう」というのが水産庁の見解です。 水産庁によると、ロシア政府は極東海域で漁獲枠を決め、漁業権を持つ正規船だけに漁を認めていますが、外国船などを偽装した違法操業が後を絶たないそうです。
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上記の2国間協定が出来たため日本のカニ市場は、2012年9月以降、駆け込み輸入が急増し値崩れを起こしました。2012年のタラバガニ年間通関量1万8000トンの内、活タラバカニ前年比2.7倍。冷凍タラバガニ1.8倍と急増しました。搬入量が増える一方で、価格は「値付かず」の安値となっているそうです。(図1)
2国間協定は、ロシア政府がカニを輸出する際、漁獲海域や量をチェックした証明書を発行し、日本政府はその証明書を税関で確認したうえで輸入を認めるとの内容です。発効後は、証明書がないカニの日本国内への輸入は認められないことになります。そこで、その前に売ってしまえと、大量のカニがロシアから日本になだれ込んで、供給過剰により相場が大きく下落しているのです。