EUへの輸出には漁獲証明が必要
EUでは2010年より、漁獲証明(catch certificate)がない水産物は輸入できません。EU向けに輸出するためには、輸出国は、そのつど資源管理された漁獲物であるための証明書を出す必要があるのです。日本でも輸入の際、一部の魚種(メロ等)で漁獲証明が必要になってきていますが、これはまだ例外に過ぎません。ノルウェーでは、迅速に発行するために電子化を進めています。同じ天然魚でも、EU向けと日本向けではノルウェー側が用意する書類が異なっているのです。
勿論、ノルウェーでは資源管理が徹底されているので証明書が出されないようなケースはないのですが、このように輸入国が、過剰に漁獲されている水産物は輸入しないという意向を明確にすることで、輸出国に経済的な影響が出て乱獲は減少していくのです。
EUはIUU(違法・無報告・無規制)漁業問題について、2012年 EUの海事・漁業大臣を来日させ、国際資源管理の推進と違反漁業対策の強化に向けた日本・EU間の協力を盛り込んだIUU漁業問題への取り組みに関する共同声明に署名しています。多くの日本人が知らないだけで、資源管理されていない水産物は、世界から弾き飛ばされているのです。減ってきた魚は食べられるうちに、今のうちに食してしまおうという考えではありません。
水産エコラベル(MSCマーク)の導入が進んでいるドイツでは、ラベルについて知っている人の割合が2008年は10%、2010年は36%、2011年は52%で、その内22%は、内容も理解しており、マークの認知度が急速に高まっているそうです。同じ水産物で、輸出国によって水産エコラベルがある国とない国がある場合、既に同国では選択の余地は無く、ラベルがない国のものは、輸入対象から外されるそうです。
経済的な影響が大であるために起こる資源管理
「なぜ漁獲枠の数倍のカニを獲っていたロシアが急に資源管理を強化したのか?」ということについては、経済的な影響が大であるからと考えるのが自然だと思います。資源管理をして水産エコラベルを付けられるかどうかで、販売とその利益に決定的に影響が出るのが明白になったために、必然的に変わらざるを得なくなっているのです。
ロシアの北東サハリンのマス、西カムチャッカの紅鮭とMSCマークの認可が続いていますが、これらは、特に欧米市場を意識したものといわれています。スケトウダラのマークの認証で、欧州向け販売で、米国に遅れをとったロシアが巻き返しを図っているのです。MSCに関しては、2013年1月現在、250の漁業がMSCのプログラムに参加、その水揚げ合計は900万トンに達しており、世界で漁獲される天然魚の10%を占めるようになっています。日本でも、3漁業がMSC認証を受けています。しかし、日本では、大日本水産会が認証するマリンエコラベルや、MSCマークを消費者が認識し、資源管理されたものを優先的に購入する傾向があるとは、一般的にはあまり感じられていないと思います。