2022年7月5日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2022年3月19日

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オードリー・タンと、ダーウィン

 本書では、不注意が目立つ人の場合、毎朝仕事リストを箇条書きし、終わり次第消して行く事例などを紹介している。

 ところで、本書に登場する天才たちは、ダ・ヴィンチにしろ、ピカソ、エジソンにしろ、あるいは先に挙げたビジネス界の内外4人にしろ、ことごとくADHDである。

 台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンは16歳でIT企業を立ち上げた「ネットの神童」。ASDで目立つのは彼くらいだ。

 「発達障害の中でもっとも多いのがADHDです。成人の3~5%。これはASDの5~6倍に当たり、一説には10倍とも言われます。人数の多さが理由の第一です。第二は、現代がコミュニケーション重視社会になって対人関係が基本的に苦手なASDの人が、なかなか活躍できなくなったからですね」

 岩波さんによれば、19世紀の偉人チャールズ・ダーウィンは典型的なASD。毎日決まった時間の散歩を欠かさず、人嫌いで、面会はせずもっぱら手紙で他者と交流した。

 「現代、特に第2次大戦後は、そのようなASDの人が好むライフスタイルが、実行しにくい世界になってきました」

 毎週45分間フランスの精神科医と対話し、25分仕事して5分休むオードリー・タンが台湾社会で受容されたのは、飛び抜けた才能と理解ある周囲がたまたま揃った幸運な例なのだ。

 「オードリー・タンのいない日本では、コロナ禍対策でも迅速性欠如、デジタル化の遅れなどで辛苦を舐めています。イスラエルのエリート養成プロジェクトのような国家主導プランもありますが、発達障害の人の異才を生かす方策は、日本ではどうでしょうか?」

 「イスラエルは戦時体制下にあり特別です。均質性が強く、前例踏襲の日本では、行政による異能エリート養成はとても無理です」

 「でも、本書にあるように、オムロンやメルカリなどの企業では取り組んでいますよね?」

 大手電気機器メーカーのオムロンは、異能人材採プロジェクトを立ち上げ、新製品開発などに発達障害人材を活用し始めた。

 国内最大のフリマアプリのメルカリも、口頭だけでなくテキストによるコミュニケーションを重視するなど、発達障害の人の働きやすい環境を整え、異能人材確保を図っている。

 「日本の場合、企業やNPOが発達障害の人に働く場所を提供し、行政はその後押しをする形がいいのかもしれません」

 日本の漫画やアニメ業界は早くから異能の作家を取り込み世界で成功を収めてきた。その教訓をテクノロジーやビジネスの分野でもぜひ活かして欲しい、と岩波さんは力説するのだ。

  
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