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WEDGE REPORT

2022年3月28日

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 日本独自の取り組みも始まる。今年度中に「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)」で小型月着陸実証機が日本から打ち上げられる。その後、「月極域探査ミッション」として月面探査車(ローバー)が投入され、月面における水資源の存在量と資源としての利用可能性が調査される。

 まさに今年から月関連プロジェクトが目白押しという状態なのだ。だからこそ、文部科学省研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室の国分政秀室長は「こうした取り組みを契機にして、いかにして民間企業に参入してもらうかがポイントになる」と話す。

 同じく、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の笠間太介企画官は「宇宙事業は、長期のプロジェクトになる。すぐに成果が出なくても宇宙利用で培ったノウハウを地上における事業にも活用するなどして、投資の継続性を確保することも大事」だと指摘する。内閣府では20年度から「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」を創設し、宇宙開発利用推進費を予算計上して月面開発に取り組む民間企業へのサポートを開始している。

 また、昨年12月には「宇宙資源法」が施行された。天体は国家が保有してはならないという「宇宙条約」が国連で採択されているが、採取した資源の利用に関しては記載がなかったために、日本でも米国などに続いて、天体資源の保有を認める法整備が行われた。

月面で1000人が暮らし
毎年1万人の旅行客が訪れる

 では、民間企業の取り組みはどうか。先陣を切るは、日本における月関連民間企業のパイオニアとも言えるispace(アイスペース) だ。同社が率いたチーム「HAKUTO」は、グーグルがスポンサーとなった懸賞レース「Google Lunar XPRIZE」(民間資本だけで月面に着陸させてロボット探査機を動かし、地球と通信する)で、15年に中間賞(賞金50万ドル)を獲得したという実績を持つ。このときは、ローバーを完成させたが、パートナー企業の月着陸船(ランダー)の開発が遅れ、レースの期限である18年3月までに月に到達することができなかった。

 それでも、「HAKUTO-R」(Rは〝R〟eboot)として、18年9月から新たなプログラムを立ち上げた。ミッション1として独自開発のランダーを送り込み、ミッション2で独自のローバーを走らせて月面を探査する。ミッション1と2を総称してHAKUTO-Rという。ミッション3以降では、高頻度でランダーを月に送り込み、「地球から月」の輸送事業者となるとともに、独自に月面を調査することで、そのデータを販売するという2つの事業を確立する予定だ。このミッション1が、今年末に予定され、JAXAのロボット、日本特殊陶業の固体電池などが搭載される。

ミッション1に月面着陸に挑むispaceのランダー (©ispace)

 子どもの頃に見た映画『スターウォーズ』をきっかけにして「宇宙」への憧れを持ち続け、名古屋大学工学部や米ジョージア工科大学で学んだアイスペースの袴田武史Founder & CEO(42歳)は、「2010年に会社を立ち上げたときにはここまで時間がかかるとは思わなかった。ただ、チャンスがある限り食らいついてきた」と振り返る。

 何よりも大変だったのが資金調達だ。「いくら優れた技術があっても、それは要素の一つでしかない。経済的なメリットがないと継続できない」。そんな思いを強くしたのが留学した米ジョージア工科大学の担当教授の姿だ。研究のかたわら「中小企業の経営者のように」資金繰りに奔走していたという。

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