Wish(ウイッシュ・願望)とWants(ウオンツ・欲求)
をたくさん心に抱かせる
夢の教育と言っても、教科書などないのだから、私にもどうしたら良いかという確固たるアイディアがあるわけではない。しかしまずは幼い頃から、「あれもしたい、これもしたい」というWish(ウイッシュ・願望)とWants(ウオンツ・欲求)をたくさん心に抱かせることだと思う。これは、新しいビジネスを起業する際のアプローチと同様のものだ。WishとWantsの溢れる社会においては、それを叶えるためのスタートアップ企業が勃興してイノベーションを起こすことが多い。
溢れるWishやWantsは起業家の着想の源泉であり、経済的成功への野心がビジネス推進のエネルギーだ。われわれ一人ひとりも、多くの願いや欲求を持ち、それをどうやったら実現できるかを考え、自分の人生にイノベーションを起こしていきたいものである。一人ひとりの人生にイノベーションを起こすことができる教育とは、偏差値を上げるための受験対策教育とは全く異なるはずである。
さて、上の段落でスタートアップ企業について言及したが、その数たるや米国が圧倒的に多く、日本は非常に少ない。ここにもWishやWantsの熱量とそれに対するイノベーションを起こそうとする力の差を感じてしまう。この問題はまた別の機会に考えてみたい。
ちなみに「スキー命」の我が息子である。スキーをオールシーズンで行うためには、季節による北半球・南半球の壮大なリロケーションが必要になる。そこはあっけらかんと、「仕事はオンラインでできるのだから住む場所は関係ない」と言い切る。コロナのせいで学校行けず、自宅でオンライン授業を受け、別室では父親がやはりオンラインでベトナムと会議をしているという環境でここ2年ほど過ごしてきた。
コロナは大変な惨禍をもたらしたが、今まで誰も疑いさえしなかった「学校や仕事はオンサイトで」という概念を覆してくれた。これは「どこでもドア」を手に入れたようなもので、ロケーションに対する大きなイノベーションだ。これをデファクトにしている今の子供達は、私のような大人が考えつかない発想でライフプランもキャリアプランも描いてくれるかもしれないと期待してしまう。
冒頭の質問の二つ目、
「あなたの今の夢は何ですか?そしてそれはこれから叶うと思いますか?」
まずは大人たちが数えきれないほどのWishとWantsを抱きたいものである。そしてそれらを実現するためにどんなアクションを取るかだが、それを教えてくれる教科書は今はない。人生にイノベーションを起こすような学びを与える機会、何かそういうものを創り出すことはできないか。それが今の私のWishであり、今後のライフプランの一つである。
最後になるが、この原稿を書いている時点でウクライナにおける戦火は収まっていない。多くの人が幸せな生活を追われ、そして現在進行形で命が失われている。独裁者によって戦地に送られた侵略側の多数の命も潰えた。多くの夢が消えていくのを目の当たりにし、その無念たるやいかばかりかと胸が張り裂ける。一刻も早い収束と戦争犯罪者の断罪のために、世界はアクションを加速しなくてはならない。