2022年12月4日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年4月4日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 日本の長所は、なんといっても現場にノウハウがあり、それが継承されていることだ。これは職人が誇りをもって技術を受け継いできた伝統がベースになっている。また、ジョブローテーションなどにより、ホワイトカラーとブルーカラーの分断が小さい点も欧米とは大きく異なる。現場の人材が理念や意義を感じながら仕事に励み、経営層も現場を「知る」ことにより「タテ」のラインを重視する伝統は、日本の品質を支える重要な思想なのである。

 また、多くの製造業にみられるように、自分の仕事を前工程と後工程の中で位置付け、関連部門や協力会社と一体となって計画を遂行するなど「ヨコ」のつながりを大切にする文化も生かしていくべきだ。

 例えば、自分が担当する工程で使用している部品の素材が環境規制の対象になったとしよう。当然、厳格化された規制に適合した素材の部品を調達して使用する必要があるが、その部品を使用すると、前工程でそれまでより多くの穿孔が必要になり、後工程では配線が変わるといったことは往々にして起こる。しかし、日本企業の多くは、こうした状況に直面しても関係各所との連絡を徹底し、協調することで迅速に作業を転換し、仕様の変更を成功させてきた。これこそが「ヨコ」のつながりを大切にする文化である。

 一方で、多くの日本企業は、長期的なビジョンを描き実現することに強みがあるという「自画像」を持っている。しかし、変化の激しい時代となった現在、日本企業が不得意な、迅速な戦略投資などを求められる業種・業態では、そうした強みをいったん封印する選択肢も視野に入れるべきだろう。

 経営判断も、資金調達もスピードアップし、必要なリストラや償却・売却など損切りも必要であれば断行すべきだ。反対に、従来は苦手とされていたデジタルの分野において、スピード感を意識し、「タテ」と「ヨコ」の総合力を生かして攻勢に転じることができれば、産業構造転換の早期実現も夢ではない。

※筆者の連載「冷泉彰彦の『ニッポンよ、大志を抱け』」はWEB版でさらに詳しくご覧いただけます。
 
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