2024年4月26日(金)

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2022年4月8日

交渉における「立場」と「利害」

 世界的な超ロングセラー『ハーバード流交渉術』(三笠書房)を書いたウィリアム・ユーリー氏とロジャー・フィッシャー氏は「原則立脚型交渉」を提案し、「立場よりも利害に焦点を当てる」ことの重要性を訴えた。ロシア交渉団はこの原則に反した行動をとったといえる。

 ロシア側はウクライナの「中立化」に固執し、南部クリミアはロシア領であると主張して、領土問題を協議の対象外にしたからだ。東部ドンバス地方に関しては、ウクライナからすでに独立し承認されているとした。彼らは「領土と主権」について「議論の余地がない」という立場をとった。

 メジンスキー大統領補佐官は「ロシアの立場に変わりはない」と記者団に語り、「力」の交渉により、ウクライナ側をねじ伏せようとしたことは間違いない。

共通利害に焦点を当てたウクライナ

 これに対してウクライナ交渉団は、立場ではなく共通利害に焦点を当てた交渉にシフトして、柔軟な姿勢を示した。北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念し、外国の軍事基地をウクライナ国内に設けない代わりに、新たな集団的な安全保障の枠組みを提案した。ウクライナ側とロシア側双方に対して「安全」を保障する枠組みである。

 ウクライナ側はこの集団的な安全保障の枠組みに米国やイギリス、フランス、トルコ等にロシアと中国を加える構想だ。これらの国を「保証国」と呼んでいる。ではなぜロシアと中国を取り込む必要があるのか。

 ゼレンスキー大統領は「安全」を確保するには「ロシアを縛る目的がある」と語ったが、そもそも同国が参加しなければ「ミニNATO」および「第二NATO」に成りかねない。軍事面並びに経済面でロシアに支援をさせないためには、中国を集団的な安全保障の枠組みに関与させる必要があるからだ。


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