2024年7月15日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2013年3月15日

「脱物質型住宅」へ
価値観の転換を

 「20世紀の大量生産・大量消費というパラダイムに基づく環境負荷の大きい文明の見直しが不可避である。そのためには、まず環境負荷L(Load)の削減が求められる。しかし同時に人類が人間的生活を営むことのできる環境品質Q(Quality)の確保も必要である」と、著者は考える。

 とはいえ、「環境負荷を削減することは可能であるが、これを過剰に追求すると環境品質の低下を招く。一方、環境品質の向上を図ることは可能であるが、環境負荷を増加させずにこれを達成することは容易ではない。すなわち、環境負荷の削減と環境品質の向上は、従来の物質信奉文明のパラダイムの下ではトレードオフの関係になりがちである」。

 このトレードオフを克服するカギとなるのが、「スマート化」と「スリム化」という。

 「スマート化」は、情報技術を活用するイノベーションにより環境・エネルギー・情報を融合させることで、また、「スリム化」は、新しい価値観や定義に基づく環境品質の考え方を導入することで、Lの削減とQの向上を図るものである。

 スリム化の具体的事例として、著者が開発に携わってきた建築・都市の環境性能評価ツール「CASBEE」(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)による建築・都市の環境性能の格付けと「見える化」が、本書には詳しく紹介されている。

 「CASBEE」における環境効率は、Q(達成された環境品質)/L(そのために発生した環境負荷)として定義されるもので、たとえば、地域固有の気候風土にあった伝統的建築物(ヴァナキュラー住宅)を評価すると、イヌイットの雪氷住宅イグルーやインドネシアの高床式住居などが高評価を得る。日本の茅葺も同様である。

 一方で、Qの視点で見れば、ヴァナキュラー住宅は現代住宅に劣り、決して居住環境水準が十分高いわけではない。現代の日本の省エネ住宅には、Sランクのものも多い。

 要するに、伝統住宅→大量消費型住宅→省エネ住宅と推移してきた住宅を、さらにQが高くLが低い「脱物質型住宅」へもっていく価値観の転換を、著者はわかりやすい図表を示して訴える。


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