天は自ら助くる者を助く
神は必要な試練のみを人に与えるのではないだろうか。本作品では上記の例以外に、このようなシーンが何度となく登場する。エスポワール以後の第2章「鉄骨渡り」でも、クライマックスでまさにそうしたシーンが描かれる。重要なのは、諦めないこと。
絶望の最中でも、これこそが実はチャンスなんだ!!と捉えて、前を向く姿勢を保つこと。そこで見上げてみたら、新たな解決策、本当のゴールに向かう道、が見つかることがあるのだ。
8巻88話「魔道」からの一連の流れはまさにそれで、カイジは以下のように表現している。
「一度失望しなきゃ立ち上がらない、そんな救い、希望、見えない道」
このシーンの筆致は素晴らしく、絶望して下を向いたままでは気づかない、上を見上げるからこそ見える希望の道を、ぜひ本作品を手に取り、確かめてみていただきたい。
さて、結果的にこのように、挫折経験があれば多様な視点が生まれ、バランス感覚を持ったオープンマインドな姿勢が育まれやすいといえるのだ。筆者が通っていた大学でも、現役合格生と浪人生には、大いにメンタリティの違いがあることが分かっている。
現役生は挫折経験が無い分、素直で真っ直ぐと言う良さを持っているが、浪人生は、多様な視点を持てており大人で、さまざまなものを寛大に吸収できるという良さがあった。まさに大学受験に落ち、一度否定されても諦めずに視点を変えて、望むべき結果を手に入れていったからこその姿なのであろう。
上述のエスポワール号でのシーンでは、カイジと同じ状況に立たされ復活できなかった男性が以下のように述べる。
「こんな地の果ての穴蔵みたいなところでも、こんな逆転が起こりうるなんて……諦めさえしなければ……」
全てを失い絶望した時こそ、下を向かないよう注意しよう。天は自ら助くる者を助くのだ。これこそが成功を掴むためのただ一つの要諦であると、締め括ることができるだろう。
「絶望とは本当のチャンス。今までの価値観やこだわりを全部捨て、新たな視点を手に入れる機会なのだ」ということを、胸に刻んで生きていこう。