2022年8月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年6月1日

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日本やクワッドとの関係強化も期待

 5月12日から13日にワシントンで開催された米国・ASEAN特別首脳会議では、28項目の「共同ビジョン声明」を採択した。カウシカンが指摘した点に関連する会議の成果は次の通りである。

(1)米国にとってのASEANの位置付けについては、本年11月の第10回米国・ASEAN首脳会議を目指して「包括的戦略的パートナーシップ」を確立することが合意された。2017年以来空席であったASEAN担当大使に国家安全保障会議(NSC)の事務局長であるヨハネス・アブラハムが指名された。

(2)中国の海洋進出を念頭に、航行の自由等海洋法の順守や海上法執行機関の協力等海洋関連事項が詳細に取り上げられた。他方、メコン川に関しては、まだ緒に就いたばかりである。

(3)ASEANへの経済支援としてバイデンは、インフラ、安全保障、新型コロナウイルス対策、クリーンエネルギーなどの分野に1億5000万ドルの資金拠出を発表したが、中国が昨年約束した経済回復のために3年間で15億ドルに比べいかにも象徴的なレベルとの批判もある。

(4)民主主義の問題については触れられなかった。カンボジアやタイの政権は野党を弾圧し政治犯を拘束して政権を維持しており、ベトナムやラオスは一党独裁国家で、シンガポールでさえ表現の自由の規制等で批判されている。人権や基本的自由については、ミャンマーについて「声明」でASEANのイニシアティブを支持し問題の平和的解決を呼びかけたのみであった。

(5)ウクライナ問題については、ロシアを名指しで非難はしていないが、その主権、政治的独立、領土保全の尊重が再確認され、国連憲章と国際法の順守を求める等、ロシア非難決議に棄権したベトナムやラオスにとっては一歩踏み込んだ内容となった。

 バイデン政権が、ミャンマーは別として、民主主義か権威主義かといった二者択一を迫ることなく、ASEANとの関係を強化する方向に舵を切ったことは、ASEAN側の事情にも配慮した合理的な対応と評価される。日本やクワッドによるASEANとの関係強化との相乗効果も期待でき、良いスタートを切ったと言えよう。

  
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