世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月2日

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 ランド研究所の上級防衛担当分析官であるデレック・グロスマンが、バイデン政権はこれまで中国の裏庭であるカンボジアとラオスを無視してきたが、今や攻勢に出るべき時が来ていると、1月12日付のForeign Policy誌で論じている。

Victor Metelskiy / Harvepino / iStock / Getty Images Plus

 オバマ元大統領がカンボジアやラオスを訪問した当時よりも、フン・センの独裁化、中国への従属ははるかに進んでおり、南シナ海問題などでは東南アジア諸国連合(ASEAN)での対応を通じて地域の安全保障に有害な役割も演じて来た。バイデン政権は、カンボジア、ラオスを単に無視しているのではなく、両国は既に中国に取り込まれており、今更甘い顔をしても得るところは無いとの判断があるのであろう。グロスマンの論説は、それらを踏まえた上でも、中国との対抗上、もう少しやり方があるのではないかとの指摘である。

 確かに、一方的な制裁措置は、効果がないのみならず、中国依存を深めるとの指摘は当たっているように思う。2018年の選挙に先立ちフン・センが野党を弾圧したことに対して、欧州連合(EU)が貿易上の制裁措置を取ったが、これがカンボジアの中国との自由貿易協定(FTA)交渉を促進させる要素となった。

 米国議会にもカンボジア制裁の動きがあるが、最近のバイデン政権の武器の禁輸措置も、現在米国製兵器を調達していないカンボジアにさしたる効果は無く、中国の武器供給への依存という逆効果を招く可能性が高い。 

 カンボジア和平や平和構築に大いに貢献した日本としても、フン・セン政権の親中国路線は面白くない所ではあるが、これはイデオロギーや友好関係というよりも単純な打算の面が大きいように見える。中国の圧倒的なインフラ支援、民間投資、そしてワクチン供給といった支援は、カンボジア経済を支えているし、国境問題を抱えるベトナムとの関係で中国の後ろ盾は重要であり、何よりもフン・センの非民主主義的体制が国際的に問題視される中で、無条件で擁護してくれる中国にフン・センは、頭が上がらないだろう。 

 しかし、経済面では、中国のカンボジア支援は、競技場などの象徴的な案件を別として、多くのインフラ案件やワクチンの供与も商業ベ ースで行われている場合が多い。中国企業との癒着の問題はあるが、カンボジアは制度としては開放的経済であるので、どの国であれ、それが米国であってもインフラ投資や民間投資を行うのであれば、歓迎されるであろう。それが、「一帯一路」に対抗するレベルになれば、経済面でカンボジアもラオスも中国一辺倒である必要はなくなるはずである。また、日本に対しては、それなりの恩義を感じており、また、着実な政府開発援助(ODA)協力も評価されており、一応一目置いている。 

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