従って、米国がコロナ対策やポスト・コロナの経済再生を目的に、カンボジアやラオスに対し、医療支援及びインフラ整備や民間投資促進のためのイニシアティブを、日本、豪州などと連携して検討する余地はあるのではないか。経済成長を続けるカンボジアは、企業にとっても将来性があり、雇用を生む投資をますます必要としている。
対ASEAN外交としても有効
日本や欧米からの投資が増加すれば、経済面での中国依存を緩和する効果を期待できる。カンボジア、ラオスだけを対象とすると中国への対抗という姿勢が強調されてしまうので、日本がかつてメコン流域を1つの 広域開発圏としてODA政策を進めたことがあるが、ベトナムなどを含め地域として支援の対象と位置付けることも一案であろう。
他方、民主化問題では、米国が柔軟なアプローチができれば良いが、議会との関係や価値観外交のバイデン政権には限界もあろう。理想的には、フン・セン自身が反対派を弾圧せずに選挙に勝つにはどうしたら良いかよく考えてもらう必要がある。
当面の問題として、2月に米国・ASEANサミットの開催が予定されており、その機会を用いたバイデンとフン・セン首脳会談が期待されていた。フン・センのミャンマー訪問により、むしろASEANが分裂する可能性もあり、サミットもいつ開催されるか判らない状況であろう。むしろ、この問題を契機に、カンボジアが議長国としてASEANをまとめる上で、よりバランスの取れた対応をしなければならないことをフン・センが悟り、軌道修正することを望みたい。
いずれにせよ、グロスマンの論説が指摘する通り、バイデン政権がもう少し積極的なアプローチをとることは、対ASEAN外交の面でも重要である。