2022年12月4日(日)

21世紀の安全保障論

2022年6月6日

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吉富望 (よしとみ・のぞむ)

日本大学危機管理学部 教授

1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。陸上幕僚監部、防衛省情報本部、内閣官房内閣情報調査室、防衛大学校教授などを経て2015年退官。拓殖大学大学院国際協力学研究科修士課程修了、博士後期課程(安全保障専攻)単位取得退学。主著に『防災をめぐる国際協力のあり方』(共著・ミネルヴァ書房)。

 このように、中国とロシアの要請に応じて挑発行為を行うことは、北朝鮮にも大きなメリットがある。また、こうした挑発行為は確実に国連安保理での追加制裁決議案の審議を招くが、中国とロシアが拒否権を行使することは確実なので、北朝鮮としては安心して挑発行為に踏み切れる環境がそろっている。

 なお、ロシアのウクライナ侵攻に対する米国の対応を見た同盟国・友好国の中には、米国の国際的な安全保障への関与に対する不安も見られた。中露両国と対峙する米国としては、こうした同盟国・友好国の不安を払拭する必要があるため、北朝鮮が日本や韓国に対して烈度の高い挑発行為を行った際には、必ず対応するであろう。

 この対応には、日本や韓国に対する軍の増派、大規模な演習、限定的な反撃などが含まれる。そうなれば、米国によるウクライナへの軍事支援の優先度は下がることになる。

挑発行為への備えを

 北朝鮮による挑発行為へ効果的に対処するためには、米国のみならず日本と韓国による迅速かつ毅然とした対応が不可欠である。それと同時に、日米韓の三国の意思疎通と緊密な連携が重要である。

 ここでポイントになるのは日韓関係の改善である。幸いなことに、韓国の尹錫悦政権は日本との関係改善に前向きである。ただし、22年3月の韓国大統領選挙で尹錫悦候補は勝利したが、対抗馬の李在明候補との票差は得票率で0.7ポイント、票差はわずか24万票余りの辛勝であり、尹錫悦政権が日韓関係の改善に向けて大胆な政策転換を行えるかは不透明である。

 日本としては、日韓関係の改善に努めるとともに、これまで経験しなかったような烈度の高い挑発行為、例えば日本の領海内へのミサイル発射なども予期し、対応について米国や韓国と調整する必要がある。また、日本や韓国に来援する米軍に対する後方支援体制を充実させることも不可欠だ。いずれにせよ、ウクライナ戦争でロシアが苦戦する今、北朝鮮から目を離してはならない。

  
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