2022年12月7日(水)

バイデンのアメリカ

2022年5月18日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 米バイデン大統領は今月23日に行われる日米首脳会談で、日本の安全確保を念頭に置いた核使用を含む「拡大抑止」姿勢を改めて確認する。ただ今後、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、アジア方面でも中国、北朝鮮による軍事挑発への警戒感が高まりつつあるわが国において、対日〝核の傘〟と「非核三原則」の矛盾をめぐる論議が活発化していくことが予想される。

北朝鮮が新型ICBM「火星17号」の発射実験を成功させるなど、アジア方面からの核の脅威にどう対応していくべきか(KCNA/UPI/アフロ)

くすぶり続けている〝核の傘〟悲観論

 今さら言うまでもないことだが、〝核の傘〟と言う概念は、米ソ冷戦時代を通じ、米国側が同盟国との安定した関係を維持していくことを目的として生まれたものであり、もし、同盟国が攻撃された場合、米国が敵対国に核報復することを約束したものだ。

 そして忘れてはならないのは、米国が安全を保障する対象国は、当然のことながら、非核保有国であり、将来的にも核武装しないことが大前提とされてきた。

 従って、同じ米国の同盟国でありながら独自の核を保有する英国とフランスの両国については今日、米国の〝核の傘〟は適用されておらず、現実的には、日本、韓国、豪州、カナダ、そして欧州では、ドイツ、オランダ、ベルギー、トルコの各国が適用対象国となっている。

 その一方で、米国内ではこれまで、同盟国とはいえ、〝核の傘〟を提供することにより米本土も核戦争に巻き込まれるとして、警戒論や懐疑論が顔を出すこともあった。しかし、米政府は、核保有国の拡散を防ぐ意味から、一貫して〝核の傘〟による同盟国防衛の重要性を強調し続け、今日に至っている。

 また同時に、同盟国側でもしばしば、「米国は核戦争となった場合、ロサンゼルスやニューヨークも攻撃対象となるリスク覚悟で守ってくれるはずがない」といった根拠のない悲観的見方が闊歩してきたことも事実だ。

 とくに日本のように、対日防衛への米国のコミットメントを確実なものにするために軍事基地を米国側に提供している国にとっては、いざというときに〝核の傘〟が機能しないことになれば、「日米安保」体制そのものの信頼が根底から崩れることを意味する。

米国が主張する「拡大抑止」戦略

 近年、こうした同盟国側の不安と不信を克服する目的で、米政府側で主張されるようになった軍事戦略が、「拡大抑止extended deterrence」という概念であり、バイデン大統領も今回、岸田文雄首相との会談で、この「拡大抑止」による対日防衛コミットメントを改めて約束する予定だ。

 ただ、米側の「拡大抑止」政策そのものは今世紀に入り、修正を迫られてきた。では、具体的に従来の核抑止論とどこが違ってきたのか。

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