2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年6月7日

食料需給の状況と自給力の現状

 4つの視点から検証するためには、日本の食料需給構造を見る必要がある。「食料・農業・農村基本計画」には、食料供給に対する国内生産の割合を示す食料自給率と潜在生産能力である食料自給力という形で、過去・現状の分析、今後10年の中期的方向、食料輸入が途絶した時の姿かたちと対応策が示されている。

 自給率低下の原因は、食生活の多様化・高度化でコメの消費が減り、輸入飼料を消費する穀物型畜産物消費が増加、油糧原料も国産から海外にシフトして国産カロリー供給率が低下したことにある。さらに、低価格の輸入麦の増加とコメの生産調整の影響で裏作の麦が激減したと整理される。これには、消費者の食生活の在り方や食管制度のコメ重視も大きくかかわっていると考える。

 農地面積は、一貫して減少し、目下約440万ヘクタール。その上、耕地利用率は約92%で、二毛作により130%も利用されていた1960年代に比べて格段に低い。今後の重点目標は、やはり、カロリー自給率に関わる麦、大豆、飼料作物であり、耕地利用率が100%を下回ることは、「もったいない」としか言いようがない。

 日本人の1日の推定エネルギー必要量は2169キロカロリー(Kcal)で、目下は輸入が7割だから悲惨な状態となる。いざという時、国産のコメ、小麦だけでは1800~1940Kcalしか充足できない。そこでイモ中心の食生活に切り替えれば、辛うじてカロリー的には2314Kcalを超えるのだが、とても豊かとはいえない。

 したがって、今後、農地の確保、単収の向上、労働力の確保が強く要請される。

食料事情に応じた畜産の形の模索を

 自給率の低下について、食生活の変化とそれに伴う輸入飼料を消費する穀物型畜産物消費の増加を指摘したが、実は家畜は英語で「ライブストック(Live Stock)」、つまり「需給調整弁」と言われている。穀物が過剰な場合、家畜の飼料として食べさせ、穀物本来のカロリーを、平均で7分の1に減らす。そして、消費者は脂肪(サシ)豊かな肉を食べる。日頃は健康よりも食嗜好や付加価値を優先させている。

 他方、そうでなく、牧草を食べて赤みの肉を生産する「草地型畜産」の動きもある。北海道の駒谷農場では、アンガスと和牛の交雑種(F1)を牧草地や森林の下草を用いて生産し、料理人や消費者との連携で流通させている。飼料として穀物を与える量は格段に少なく、健康が売り物だ。

 山口県や大分県には「レンタカウ」という仕組もある。耕作放棄地に牛を貸し出し、放牧させて、雑草を牛の餌として下刈り(牛の舌刈り)に充てている。

 畜産を行いカロリーベースでの食料自給率が低下していても、いざ食料危機の際は、家畜を人間の食料とし、穀物が潤沢になって際には穀物型畜産を再開する形をとる。穀物で飼育する「Grain-fed」と牧草で飼育する「Grass-fed」も使い分けることで、食生活の充実と食料安全保障の向上を図るのだ。


新着記事

»もっと見る