2024年11月24日(日)

安保激変

2013年4月2日

 特に第一列島線は中国の海岸線から200海里の距離にあり、台湾を統一しないかぎり、中国はこの第一列島線によって封じ込められていることになる。1996年3月の台湾海峡危機では、米国が2個空母戦闘群を台湾近海に派遣し、中国がその脆弱性を再確認する契機となった。以来、中国はこの二本の列島線に外敵を侵入させないために、アクセス拒否能力を本格的に高めてきた。

 「積極防衛」は毛沢東の遺訓である。その第一の特徴は戦術的攻勢で、「近海積極防衛」とは海における人海戦術、つまり絶対的に優勢な敵に対するゲリラ戦である。これに必要な戦力の中心は、潜水艦と航空機に搭載した対艦巡航ミサイルである。近い将来、対艦弾道ミサイルもこれに付け加えられるかもしれない。

 この戦術には、近づいてくる敵艦隊を探知するために広範囲に及ぶ海洋監視が必要となる。このため、中国は1992年の「領海法」によって、一方的に尖閣諸島、南沙諸島、西沙諸島の領有権を主張するだけでなく、東シナ海において大陸棚の自然延長を理由に沖縄トラフまでみずからの管轄権を主張し、南シナ海においては「U字」形にその8割の管轄権を主張している。これらの主張は軍事的な要請に基づくものであるため、中国の管轄権の主張は国際法の裏づけを欠いている。

 中国はまた自らの主張する管轄海域で、東シナ海や南シナ海で海洋監視を行う米軍の行動を阻害するようになった。代表的な例は2001年3月の海南島事件と2009年3月の「インペカブル」事件である。

 前者では海南島付近の公海上空を飛行中の米海軍電子偵察機EP-3に中国の海軍航空部隊の航空機が衝突し、後者では同じく南シナ海の公海上で米海軍の音響観測船「インペカブル」が中国の海軍艦船・海洋調査船・貨物船などから妨害を受け、米海軍は護衛のため急遽駆逐艦を派遣する事態に至った。

 これらは氷山の一角であり、中国は国際法の恣意的解釈と実力によって西太平洋の公海上で日常的に米軍の行動の自由を阻害している。先日の海上自衛隊に対する火器管制レーダーの照射もこの文脈で理解されるべきだ。

「核心的利益」の保護を全面に打ち出す

 「積極防衛」の第二の特徴は戦略的反攻である。つまり、時機が来れば決戦を仕掛けて敵の絶対的優勢を崩し、自らの勢力圏から敵を駆逐することを目指しているのだ。すでに述べたように、これまで中国が海洋進出を行ったのは、アメリカがアジアで軍事力を削減したときであり、機会主義的な動きに過ぎなかった。


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