2024年5月2日(木)

世界の記述

2022年7月15日

 これが宗教理念による犯行に基づき、政治家を攻撃したとするならば、それはテロリズムの可能性も否定できなくなる。現段階では、欧州メディアはテロリズムという用語を避ける傾向にある。

 スペインでも、80年代後半から統一教会の動きが見られ、当時だけでも「1600人の協力者」がいたと、当時のスペイン紙『エルパイス』は報じている。政治と宗教団体の癒着について、バルセロナ在住のリブラダ・Pさんは、こう語った。

 「この国でも、オプス・デイという宗教団体が政財界の大物とつながっていて、政治やカネを操っているという噂は昔から聞きます。ですが、誰がどのように影響を与えているのかは、まったく分からないのです」

 宗教団体に恨みを持ち、一人の政治家を殺害するような事件は、いつかスペインでも起こりうるのか。同じくバルセロナ出身のヌリア・テイシドさんは、「起こる可能性は否定できないが、確率は低い」と推測した。その理由として、「怒りや恨みを心の中に抱え込まず、外に吐き出すのがスペインの文化。だからデモや暴動も多いのです」と語った。 

惨劇を呼んだ日本ならではの環境

 今回の安倍元首相銃撃事件は、平和な国で起きた悲劇という声が、バルセロナの町中では大半だった。しかし、容疑者の犯行動機や殺害スタイルは、日本独特の文化や社会に根ざしているのではないか、と発言する人々もいた。

 『エルパイス紙』(7月10日付)のゴンサロ・ロブレド記者は、安倍元首相を殺害した容疑者に触れる記事の中で、次のように書いていた。

 「日本人は、マスクの装着にかかわらず、口で表現することはほとんどない。危険な行為は、視線に現れるのだ」

 心の中に溜めたストレスや葛藤を、周囲に打ち明けることができなかったことが、今回の悲劇へとつながった最大の要因なのかもしれない。

   
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