2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2013年4月23日

 中嶋さんには会社を倒産させた経験がある。父親の会社の負債が360億円に膨らみ、緊急登板。負債に個人保証を付けることで再建にかける意思を債権者に示した。全私財を投げ打ち、約1年半、取引銀行との折衝にあたったが、最終的に倒産。自らも自己破産した。中嶋さんの支援を受けた経営者は皆、「電話したら、すぐに動いてくれた」と口を揃えるが、それは相談する人がいなくて孤独だった自身の経験を踏まえてのことなのだろう。

 経営不振に陥る中小企業経営者の多くに、努力が足りないのも事実だ。決算書も見られず、銀行交渉を嫌がり、社員も資産も大切でリストラできない……。「でも、だからこそ、支援に入れば必ず良くなるはず。サポート役がいれば、中小企業は蘇る。他人事の支援では絶対ダメ」というのが、中嶋さんの信念だ。

 今年度の国の予算で、ビジネス創造等支援事業という名目で、専門家派遣に予算が付く。昨年度までの中小企業支援ネットワーク強化事業に引き続く事業だ。専門家に支払われる謝金(上限1日3万円)と旅費について、1企業3回まで国から補助される。「多くの市町村には財源はなく、中小企業には専門家の報酬を支払う余裕はありません。この予算は本当に有り難い。有効活用できるよう、中小企業と専門家をつなぐ拠点を増やしてほしい」。

 今は板橋区にしかない活性化センターだが、「東京23区、そして全国へとこの仕組みを広げたらどうか。公募制度を導入すれば、全国から人材が集まるはず」と、171社もの中小企業を救ってきたからこその思いは募る。

【4月20日発売の5月号にて、日本政策金融公庫板橋支店の八筬和夫支店長のコメントに不正確な記述があったため、お詫びの上訂正いたしました】(2013/4/23/19:10)

WEDGE5月号特集『中小企業「再生請負人」』では、中嶋さんのその他の支援現場や、企業OBを活かした事例を読むことができます。
ポスト円滑化法 出口戦略の行方 中小企業「再生請負人」
◎東京都板橋区立企業活性化センター
中嶋修さん 「経営者に常に寄り添う」
足で築いたネットワーク
◎元明治安田生命保険の「新現役」
保田邦雄さん
無尽蔵の「埋蔵資源」 企業OBを活かす
◎コラム 金融円滑化法で財務状況はむしろ悪化した

◆WEDGE2013年5月号より

 

 

 

 

 

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