外国人人口の地域差と傾向
このような地域差は日本に限った話ではなく、米国でも移民の分布は偏っていることが知られている。ブルッキングス研究所の大都市政策センターの研究報告によると、伝統的に米国の移民はゲートウェイシティーと呼ばれる一部の大都市に集中している。
実際、第二次世界大戦後にはロサンゼルスやマイアミ、直近20年ではアトランタやダラス、ワシントンDCに移民が集中した。その結果、例えばロサンゼルスの移民シェアは2000年には40%に達している。
ゲートウェイシティーとは、移民が最初に落ち着き、そこから国全体に散らばることから、最初の入口になる場所、という意味である。その後の全国への散らばりが必ずしも観察されず、移民が最初に落ち着いた都市から離れないことも多いため、「ゲートウェイ」と呼ぶべきでないという意見もあるが、移民が一部の大都市に集中していることは間違いないようである。
日本でも同様の傾向が観察される。先に例を挙げた群馬県大泉町のように、大都市でなくとも企業の積極的な誘致によりブラジルやペルーの日系人を数多く受け入れた結果、多くの外国人が暮らすようになった地域もあるが、全体としてみると、外国人はいわゆる大都市に集中している。
図2は、国勢調査の総人口に占める外国人シェアを、東京都、東京・大阪・愛知の三都府県、人口の多さで順位付けした上位10都道府県、人口50万人以上の市について求め、全国平均と比較したものである。
図より、人口の多い大都市を抱えた都道府県で、外国人シェアが全国平均より高くなっていることがわかる。また、人口が50万人を超える市でも外国人シェアは全国平均より高くなっている。
次に、図3は、国勢調査から作成した地域間の人口分布を総人口と外国人数とで比較したものである。
この棒グラフの色は図2と対応しており、同じ色は同じ地域を表している。つまり、濃いオレンジ色は東京都の、黄色は50万人以上の市のグラフである。
この図の左側が総人口に占める地域シェアを、右側が日本にいる外国人数に占める地域シェアを表している。従って、左側の濃いオレンジ色の棒グラフが総人口のうち何割が東京都にいるのかを表し、右側が日本にいる外国人のうち何割が東京都にいるのかを表している。これらを比べることで、日本の総人口の地域的偏りと、日本にいる外国人数の地域的偏りを比較することができる。
図より、東京都は総人口の1割以上、三都府県は2割以上、上位10都道府県は5割以上、50万人以上の市は3割以上を抱えることがわかる。一方、外国人数については、東京都では2割に達し、三都府県では3割を大きく超え、上位10都道府県では7割に達し、人口50万人以上の市では4割以上となる。図2、3から分かるように、外国人の分布は、単に大都市に集中しているだけでなく、総人口の分布に比べても大都市に偏っているのである。