2023年2月4日(土)

都市vs地方 

2022年7月29日

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佐藤泰裕 (さとう・やすひろ)

東京大学大学院経済学研究科教授

大分県別府市出身。1996年東京大学経済学部卒業。2002年東京大学大学院経済学研究科博士(経済学)。名古屋大学大学院環境学研究科准教授、大阪大学大学院経済学研究科准教授等を経て18年より現職。

 さらに、都市の内部でも外国人分布はかなり偏っている。図4は国勢調査の外国人数を東京都について500メートルメッシュで(東京都を500メートル四方の正方形で分割し、その正方形ごとに数字を集計して)表示したもので、濃い赤ほど外国人数が多いことを示している。

 この図から、東京都内でも外国人分布は偏っており、特定の場所に多くの外国人が居住していることがわかる。特に集中しているのは新宿区と豊島区で、次いで港区、台東区、荒川区、江東区、江戸川区にも集中している。

 このように、日本に外国人が増えたといってもその影響は地域差が大きく、特に大都市部に集中しており、さらにその内部でも特定の場所に集まる傾向があるのである。

外国人増加の経済的な影響

 このように局所的に外国人数が急増すると、その地域の経済に大きな影響を及ぼす可能性がある。例えば、移民の増加は労働供給の増加を意味するため、賃金を低下させる可能性がある。

 こうした可能性は、移民大国である米国で数多く研究され、移民の経済効果についての知見が蓄積されてきた。特に、移民が米国人労働者の賃金にどのように影響するかについては数多くの実証研究が行われてきた。

 多くの研究では、移民の増加は米国人労働者の賃金を低下させる効果を持つが、その影響は小さいという結果が得られている。通常、他の条件が一定で、労働供給のみが増えると、それに対応して賃金は低下すると考えられるが、移民の場合、なぜ低下幅が小さいのかについて、ボッコーニ大学のオッタビアーノ教授とカリフォルニア大学デービス校のペリ教授らは、移民と米国人労働者との技能の違いを考慮した分析を行った。

 移民は、母国語が異なり、育った背景も異なることから、大卒や高卒、中卒といった学歴が同じでも、異なる技能を持っている可能性がある。こうした可能性を考慮して実証分析を行うと、1990年から2006年の間、米国への移民は高卒中退以下の米国人労働者の賃金を、短期的には0.7%の引き下げたものの、長期的にはむしろ0.6~1.7%引き上げ、米国人労働者全体の賃金水準も0.6%引き上げたことが分かった。

 こうした技能の異質性は、外国人の地理的集中も説明してくれる。著者による「新型コロナでも止められぬ東京一極集中を生かす政策を」で詳しく紹介したように、人口集中は意図しないメリットである集積の経済をもたらす。こうした集積の経済は、技能の多様性からも生じることが知られており、外国人の増加が技能の多様性を増すのであれば、集積の経済を通じて外国人の集中を促すことになる。この恩恵は都市に住む人や企業に共有されるため、全体としてメリットを享受できる可能性もある。


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