2023年2月6日(月)

バイデンのアメリカ

2022年8月4日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 ニューヨーク・タイムズ紙の著名コラムニスト、トム・フリードマン氏は1日、同紙特別寄稿の中で、当局者の情報を下に、先のバイデン―習近平電話会談内容に触れ、「大統領は特にウクライナ問題で、習近平氏に対し、対ロシア支援をしないよう説得に努めた」とし、「もし、ロシアを支援した場合、中国は米国と欧州という最重要の貿易パートナーに背を向けることになる」と警告したという。

 この点に関連して、フリートマン氏はさらに、バイデン政権が警戒する対露軍事支援の一例として、中国が誇る最新鋭ドローン兵器を挙げ、もし、ロシア側に大量供与された場合、ウクライナ戦局に少なからぬ影響が及ぶ可能性にも言及した。

「息切れ状態」と言えるロシアの体制

 最近のウクライナ戦況については、米欧情報当局者の間で、今年2月侵攻開始以来、攻勢を強めつつあったロシア軍が、南部、東部前線において「息切れ状態running out of steam」となり、思ったほどの戦果につながっていないとの見方が広がりつつある。

 特に、欧州軍事情勢分析において米中央情報局(CIA)以上の能力を持つとされる英国秘密情報部(MI6)のリチャード・ムーア長官が、去る7月21日、米コロラド州アスペンの有識者セミナーで初めて開陳したウクライナ情勢判断は、国際的にも大きな関心を巻き起こした。

 ムーア長官は要旨、以下のような点を指摘した:

 「欧州諸国は、去る2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、暗躍してきたロシア側スパイ400人以上を国外追放した。この結果、ロシア側の対欧スパイ能力はほぼ半減状態となった。さらに、過去数カ月の間に、欧州各国で一般市民を装い非合法の情報活動に携わっていた〝ディープ・カバー〟(潜航情報員)多数も摘発、逮捕された」

 「わが方の情勢評価によれば、ロシア軍はウクライナにおいて息切れ状態になりつつある。特に、今後数週間は、兵員向け物資補給面で困難に直面、行軍も一時停止に追い込まれ、その結果として、ウクライナ軍側に反撃の機会を与えることになる」

 「ウクライナ軍の士気は依然高く、米欧諸国から従来以上に優れた兵器を確保しつつある。これに対し、ロシア軍側は、ウクライナの首都キーフ占拠と政権転覆という当初の作戦目的の完遂に失敗、その後、東部戦線においては、地上部隊の進軍ではなく、主として空爆作戦に重きを置き始めている」

 「ウクライナ戦争におけるこれまでの中国の反応を見ると、主としてロシア産原油買い付けという経済援助にとどまっており、軍事援助に関しては極めて慎重な態度をとってきている。中露関係の現状に関しては、ロシアはあくまでジュニア・パートナーに過ぎず、主人である中国は、戦局を一挙に打開できるとの目算があれば、対露軍事支援に積極的に乗り出すこともあり得る」

 上記のようなMI6分析は、その後のロシア軍の動きを見る限り、かなり的を射たものとなっている。

 英BBC放送が去る7月28日、英国防省筋の話として報じたところによると、ロシア側が戦争開始当初から占拠していたウクライナ南部の重要都市ケルソンにおいて、ウクライナ軍側が米軍から提供を受けた最新型長距離ロケット砲で反撃に出た結果、ロシア側の要衝オデーサとの連絡は遮断状態となっている。特に、ドニプロ川にかかる二つの主要橋が破壊され通行不能となったため、ロシア軍の大部隊は動きがとれず、逆に攻勢から防戦に作戦変更を迫られている。

 ロシア軍にとって人口30万の南部最大都市ケルソン掌握は、戦争開始以来、最初の大きな〝戦果〟として重視され、南部戦線拡大のための重要拠点されてきた。それだけに、もし、ウクライナ軍側の反転攻勢で撤退を余儀なくされた場合、今後のロシア軍作戦展開上の士気にも少なからぬ影響が出ることが予想されるという。


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