2022年8月19日(金)

WEDGE REPORT

2022年8月3日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が強く反発している。米中関係は冷却化し緊張を増すだろう。

 この後、どう展開するのか、予測は困難だ。両国間ですでに激しい応酬が展開されているが、皮相な動きに幻惑されてしまえば、米中関係の将来を見誤る。

米中首脳会談でのやり取りなどに敏感にならなければ、本質を見失う(ロイター/アフロ)

 両国関係を見る場合、払拭しきれない一抹の疑念が常に存在する。対立しながらも自らにプラスになると判断した場合、いとも簡単に妥協、宥和に転じる。同盟国の衝撃、困惑などいとわない。

 いま、そうした気配が伝わってきているわけではない。しかし、緊張が激しいと伝えられれば伝えられるほど、不安が脳裏をよぎる。実のところ、過去に日本が煮え湯を飲まされた経験が何度かあるからだ。

中国の物騒な報復示唆〝異例な〟対応

 ペロシ議長の訪台については、中国政府は「両国関係を破壊する重大な事態。必ず政治的な悪影響をもたらす」(趙立堅外務省副報道局長)と強く反発している。7月28日の米中首脳電話協議では、習近平国家主席が、「台湾の独立や外国勢力による干渉は断固拒否する。火遊びをすれば身を焦がす」と激越な表現を用いてけん制していた。

 中国はペロシ訪台の報復として、台湾海峡でのミサイル発射、台湾の防空識別圏への侵入など物騒な報復措置を検討中だという。中国にとって台湾問題は〝核心的利益〟だから、反発は予想できるとして、それにしても今回の米国に対する威嚇はヒステリックとも思える強い調子だった。

 異例の3期目政権をめざす習主席にとって、長老らの意見を聞く場である「北戴河会議」が目前に迫っているため、弱腰と受け取られる姿勢を見せることはできなかった事情はあったようだ。

 気になったのは、中国側だけでなく、米政府自身も、ペロシ訪台を過剰ともいえるほど懸念、中止を働きかけたことだ。

 バイデン大統領は7月20日、「軍は、いいことではないと考えている」と述べ、軍にかこつけて反対の意向を示した。大統領の発言としては異例だ。

 ペロシ議長は大物とはいえ、政府関係者ではない。台湾を訪問しても、米国の対中基本方針である「ひとつの中国」の原則には抵触しないはずだ。

 米国では2018年、政府関係者らの訪台を可能にする台湾旅行法が成立。20年8月から11月にかけて、アザー厚生長官、クラック国務次官、ウィラー環境保護庁長官らが立て続けに台湾を訪問し、蔡英文総統らと会談した。

 閣僚を訪台させておいて、議会関係者は認めないというのはスジが通らないだろう。 

関連記事

新着記事

»もっと見る