ロシアのウクライナ侵略を受け、中国による台湾侵攻の可能性について種々の論議が戦わされるようになっている。4月23日付の英Economist誌の社説は、ウクライナ情勢から得られる最も重要な「教訓」は、中国の台湾への「脅威は現実のもの」であり、今すぐにこれに対応するための準備が必要であるとし、台湾がより良い準備をすればするほど、中国が台湾へ侵攻するという危険を冒す可能性は低くなる、と述べている。
ロシア軍のウクライナ侵略は目下進行中であり、それが如何なる終結を迎えるのか、いまだ予断を許さない状況にある。ただ、はっきりしてきたことは、プーチンの当初の思惑通り事態は進行していない、ということだろう。そのような状況下で、エコノミスト誌の社説も、中国の将来考え得る台湾への侵攻がそれほど容易であるとは見ていないようであり、特に中国が「台湾統一」への行動をとることには、二つの大きな障害がある、と述べている。
一つは、幅180キロメートルに及ぶ台湾海峡の存在であり、ロシアと地続きであるウクライナの場合と大きく異なっていることである。二つ目は、「台湾関係法」という国内法を持ち、台湾に防禦用の武器を供与し、台湾の安全にコミットしている米国が有する軍事力である。
なお、ウクライナの場合には、バイデン政権はロシアが核兵器を使用し、「第三次世界大戦になる可能性がある」として、ウクライナへの武器支援を限定したことがある。将来、台湾海峡をめぐって、中国が台湾に対し、いかなる恫喝を行うか、それに対し、米国が如何に対応するかいまだ予想することが困難な点はある。
現在までのところ、習近平指導部はウクライナ情勢から「教訓」を得るために状況を子細に観察しているものと見られ、ロシア側の度重なる誤算、ウクライナ国民の強固な抵抗力や欧米諸国の反応などに衝撃を受けているものと見られる。そして、将来有りうべき中国の台湾侵攻のハードルは、これまで一般に考えられていたよりもはるかに高くなった、と見てよいのではなかろうか。