2022年11月27日(日)

バイデンのアメリカ

2022年8月4日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問は、バイデン政権にとって最悪のタイミングとなった。反発する中国がロシアへの接近を加速、その結果として、ウクライナ戦局が悪化するとの見方も出始めている。

蔡英文総統(右から2人目)とも会談したペロシ米下院議長(左から2人目)の訪台は米中露関係に影響を及ぼしかねない(Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)

米中双方が緊張感を高めるも……

 今回のペロシ訪台に先立ち、中国の習近平国家主席は去る7月27日、バイデン大統領との電話会談で、「訪台は、米中関係を悪化させる〝危険な火遊び〟だ」と事前警告していた。しかし、バイデン氏は「立法府は三権分立の下、独立した政府組織であり、彼女(ペロシ氏)自身の判断で決断したものだ」と説明、米政府としての従来の対中・台湾政策に何ら変更はないとして、中国側に冷静な対応を求めた。

 これに対し、中国は事前警告にもかかわらず、ペロシ氏が予定通り台北で蔡英文総統と会談したことに猛烈な反発を強めており、今後、①台湾海峡周辺でのミサイル発射、②台湾防空識別圏(ADIZ)への大規模侵入、③台湾海峡中間線を越えた空・海軍の軍事演習、④経済・外交的措置――など多岐にわたる報復行動に出ることが予想されていた。

 すでに、台湾メディアによると、ペロシ議長を乗せた特別機の台北入りと前後して、中国軍のミサイル駆逐艦の台湾沖合の航行、戦闘機数機の飛行のほか、空母「遼寧」および「山東」の出航などの動きが見られる。一方、ロイター通信も2日、米側でも、原子力空母「ロナルド・レーガン」を含む海軍の艦艇4隻を台湾当方の海域に展開中と伝えるなど、にわかに緊張が高まりつつある。

 しかし、ワシントンの安全保障問題専門家の間では、このまま両国の軍事的動きが際限なくエスカレートしていくとの見方は少ない。

 その理由として、①中国は今秋の共産党第20回党大会「20大」を目前に控え、対外的緊張拡大を望んでいない、②ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに米欧を中心とした西側自由主義陣営の結束が強化されつつある、③対外勢力拡大の基盤となる経済成長にブレーキがかかりつつある、④米側としても、当面の最重要課題であるウクライナ問題に集中対処する必要がある――などが挙げられている。

 むしろ、バイデン政権が当面、最も懸念するのが、中国側の今後の「経済・外交的措置」であり、特に、報復目的でロシアとの関係強化に踏み切り、その結果してのウクライナ戦局悪化にほかならない。

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